収入だけで負担割合を判断されることへの違和感 

相対的に高齢者は潤沢な資産を持っていることもわかっている。

金融経済教育推進機構の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、70代の金融資産保有額は1830万円だ。そのうち、預貯金は763万円。貯金額は20代から70代までで最も多い。なお、この調査には金融資産がゼロの世帯も含まれている。

金融資産は60歳から64歳までに年齢とともに増加するが、その後は大きく減らないことがわかっている。そして特に高齢者世帯ほど預金額を積み上げる傾向にある。

後期高齢者の医療費の窓口負担で考慮されるのは収入だけだ。金融資産は加味されない。2000万円近い金融資産、750万円以上の貯金を持っていたとしても、十分な収入がなければ窓口負担は1割なのだ。

写真はイメージです(photoAC)
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内閣府は高齢者の金融資産に関する意識調査を行なっている。それによると、高齢者が資産を保有し続ける理由は2つに集約されるという。1つは病気や災害、老後の生活資金など、生活の不安への備え。もう1つは子孫に残すというものだ。この遺産動機は12%程度であり、50%を超える病気や災害への備えとの回答と比較すると比率は低い。しかし、その割合は着実に高まっている。

80歳以上の被相続人は50歳以上が中心であり、高齢者から高年齢層に遺産の多くが引き継がれていることになる。若年層への資産の移転が進まないうえ、医療制度を維持するために現役世代が厳しい負担を強いられているという構図が進んでいるわけだ。