パソコンに椅子を投げつけて壊したことも
ひきこもったのは30歳のころだ。家で何をしていたのかと聞くと、「何もしていなかったですね」とあっさり答える。
「たまに大きな声を張り上げたり、自分の部屋で椅子を壁にぶち当てたり。だから、もう壁はボコボコなんですよ。パソコンに椅子を投げつけて、パソコンを壊しちゃったこともあります。
それでも両親からは怒られたことがないんですよ。兄が家にいる間は『信長の野望』とか陣取り合戦のゲームをパソコンでやって遊んだりもしてたけど、兄が結婚して家を出てからは、父と母と僕だけになりました」
母親と一緒に近くの精神科クリニックを受診。強迫性障害と診断され、服薬を開始した。障害厚生年金の手続きも母親がしてくれたという。
不思議なのは、ひきこもって間もなく受診したことだ。家族に勧められても、「医者には絶対に行かない」と拒否する人は多い。西沢さんは、どうして素直に従ったのだろうか。
「なんで自分が精神科に行かなきゃならないんだとは思いましたよ。でも、親に甘えていた分、親の言うことに逆らうことはできなかったというか、逆らっちゃいけないと思っていたので」
精神科クリニックのデイケアにも3年ほど通ったのだが、「スタッフの1人とうまくいかなくなっちゃって」途中で行くのを止めてしまったという。それ以降、通院や両親とたまに外出する以外は家にひきこもる生活が20年数年続いた。
母の異変に衝撃を受けたのは、2人で出かけたときだ――。
〈後編へ続く『母の認知症、父の死…20数年ひきこもった62歳男性の「謝りきれない後悔」』〉
取材・文/萩原絹代