「高い」と感じさせない物語の力

もしウェイターが何も説明せずに「こちら、本日おすすめのステーキです」とだけ言って提供したら、Lさんは「2万円もするなんて高いな」と思っただろう。

しかし、そこに「育てる過程」「料理のこだわり」「シェフの技術」といった物語が乗ることで、価格に対する疑問は「なるほど、そういう価値があるのか」と納得へと変わる。そして気づくだろうか? 彼の隣にいるクライアントも目を丸くしているのだ。その価値は金額にしてしまえばいくらになるのだろうか。

逆に、どんなに素晴らしい肉でも、「ただの高いステーキ」として提供されれば、客は「本当にこの価格に見合っているのか?」と不信感を抱く。人は単に「物」や「機能」にお金を払うのではなく、それが生み出す体験や感動に対して価値を見出すのだ。

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付加価値の本質 価格を納得させる「ストーリー」

この高級ステーキ店のケースからわかることは、価格や機能だけでなく、「感動」や「納得感」を作り出すことが付加価値につながるということだ。

高価格の商品を提供する企業ほど、「なぜこの価格なのか?」を消費者に説明する努力をしなければならない。もし、あなたが提供する商品が「高い」と言われることがあるならば、それは価格に見合う物語が伝わっていない可能性がある。

価格が先に出るのではなく、まず「この価値に対して、どれだけの時間と労力がかかっているのか?」を伝えることで、顧客の心に響く付加価値が生まれるのだ。