ただ書くことと本を作るとでは全く別

「そこで《事務》の側から考えるんですよ。書くネタとか、1冊を完璧な完成品として仕上げるとかはどうでもいいです」

「どうでもいいの?」

「はい。私は作家でしょ? だから経験者なので、参考になると思いますが」

「気になる気になる。どういうこと?」

「まず完成品を作ろうとしなくていいですし、ネタとかどうでもいいんです。事務的に考えると[ただ書く]ことと[本を作る]とでは全く別のことです。完成品なんか実はどうでもいいんです。私なんか完成させているものはほとんどないですよ。おじいちゃんの弥三吉証言録くらいです。それもおじいちゃんが死んじゃったから、そこで唐突に終わったというだけです。それ以外の書いているものは、今も全て継続中です。私は本を書こうとしているのではないのかもしれません」

「え、どういうこと?」

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「ただひたすら[書くこと]が《好き》なんです。はっきり言うとなんでもいいんです。書いていたら楽しくて幸せで、それ自体が一生のエンジンになると確信してますし、現にそうやって、私はしっかりと生きてます。一方、[本を作ろう]と考え始めると作業は止まります。それは書く楽しみ、と本を作る楽しみが違うからです。あなたは書きたい人ですか?本を作りたい人ですか?」

「ただひたすら書きたい!でもまあ、本を作りたいとも思うよ」

「大丈夫ですよ。あなたは《将来の現実》で、毎日10枚書いているわけですから、原稿があればいつでも本は作れます。1ヶ月半で1冊分できるという計算にしといて問題ありません。[本を書く]と同じ時間を、[本を作る]ことにも注いでみましょうか。つまり、3ヶ月で1冊の本が完成する計算になります。出版されなくてもいいんです。出版社が反応しなくても、自分なりに完成品を作っておく。そうすると、1年に4冊は書けることになります。今から10年続けたら、必ずそれくらいの書く力はつきます。ここは経験者としての私の勘ですので、ご心配なく」

「へえ、ここは一つ素直に聞いてみるよ。でもそうだね。どんな景気でもどんな社会でも関係なく、僕は1年に4冊書けるだけの筋力がついていると思うと、今から20年後がさらに楽しみになってくるね」

「いいですね。10年後の現実を書くことで、もう既に成長が始まっていますよ。20年後も夢物語じゃなく、ちゃんと現実の物語に変化していくはずです」

「そうすると、150万円を4冊だから、600万円になる。なんとなくそれくらいでちょうどいいかも。あとは連載原稿とかもやってそうだし、トークショーとか人前で話すようなこともして、歌も歌うし、絵も描くわけだから」

「残りは400万円ですね。連載原稿1回の原稿料はいくらくらいになりそうですか?」

「大学の研究室で雑誌掲載用にエッセイ原稿を書いたことがあるんだけど、1ページで3万円だった。それを1ヶ月に3社で書いたとして9万円。1年で100万円くらいか」

「いい感じですよ。残り300万円」