事務の世界には失敗はない
「10年後の年収は1000万円でしたよね」
「そうだね。正直2000万円とかいっているイメージはないよ。でも300万円って感じでもない。1000万円いってたら嬉しいなって」
「楽しくないことは一切しないでいいですから、それでいいんです。楽しくないことの《事務》なんてなんの意味もありません。楽しむためにだけ《事務》があるんです」
「そう考えるとさらにやる気になるよ」
「では1000万円の内訳に入りましょう」
「いいね、《事務》っぽい」
「はい、1000万円をどうやって稼いでいるのかをイメージしてみてください」
「うーん……、1000万円なんか稼いだことがないからな……。今のところ、僕は一度も作品を売ったことがないし……」
「それでもできますよ。《将来の現実》が見えたんですから。大丈夫です」
「あっ、ジム!」
「どうしました?」
「俺、作品を売ったことがあった!小学5年生のとき」
「へえ、それは興味深いですね」
「俺、サンリオっていうメーカーが作ってる文房具が好きでね、『みんなのたあ坊』っていうキャラクターがいて、それが傑作でさ。自分もキャラクター商品を作ってみたいと思ったのよ。コピー用紙に色鉛筆で罫線を引いて、下のほうにキリギリスを主人公にしたキャラクターを描いてさ。既成の封筒を分解して構造を学んで自分でも封筒まで作ってみてね。それで透明のOPP袋に入れたら、自分でもレターセットが作れたのよ。それを1セット50円で同じクラスの女の子たちに売ったことがある」
「素晴らしい。もう既に《事務》をやっていたわけですね」
「確かに」
「じゃあその調子で、自分が何をどれだけ売れば1000万円になるかをイメージすればいいんですよ」
「そっか。50円のレターセットだと……20万セット売らなきゃいけないね。それはちょっと大変だ」
「もう少し値段上げていきたいですね」
「例えば朝書いている執筆原稿が本になったとしたら、1冊1500円だから6666冊売れば1000万円になるな」
「それは現実的な感じですね」
「でも待てよ。出版社が出してくれるってことになったら、全部俺のところには入ってこないよね」
「そうなりますね。大抵本の印税は10%くらいだって聞いたことがあります」
「そうすると、1冊150円しか入ってこないのか……。6万部以上売らなきゃいけない」
「イメージできますか?」
「6000部は売れそうな気がする。でも6万部だと売れても1、2回って感じだな」
「そうすると100万円くらいしか入ってこないですね。でも、イメージが暴走していないのはとてもいい流れです。自費で出版している感触はありますか?」
「うーん。自力で出版するとなると俺が先にお金を払うわけじゃん。そのお金がまだないと思うんだよね。だから出版は出版社に任せちゃうと思う。その頃は」
「でも年収が1000万円を超えてくると、考えられそうですね」
「それはあり得るね。《将来の現実》が10年後に《現実》になっていれば、さらに10年後の《将来の現実》で自費で本を出版することも描けそう」