ヨーロッパでは極右政党が拡大しているが…

政府は7月に入って矢継ぎ早に問題の解決策を打ち出した。国民健康保険料を前納する仕組みを導入し、外国人が市区町村で住民登録する際にまとめて支払えるようにする方針を発表。運転免許の外免切り替えは、交通ルールを問う知識確認のハードルを上げることを決定した。また、住民票を求めて短期滞在者は切り替え手続きができないようにもする。

外国人による不動産の取得については、国民民主党が7月2日に追加公約を発表し、外国人による居住目的ではない投機目的の不動産取得に対して、追加の税負担を求める空室税の導入を掲げた。議論が活発化すれば、日本の緩い外国人の不動産購入規制が変化する可能性もある。 

参政党がこうした世の流れにあったことは確かだ。

すでにヨーロッパでは、極右の排他的な政党の躍進は広がっているが、2025年2月に行なわれたドイツの総選挙では、極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が第2党となった。

ドイツのための選択肢(Alternative für Deutschland) 写真/shutterstock
ドイツのための選択肢(Alternative für Deutschland) 写真/shutterstock
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この党はメルケル政権の移民政策やギリシャの救済措置に不満を抱く学者によって結成されており、移民・難民問題にスポットを当て、反イスラム主義で支持を拡大した。AfDはSNSを使って若年層の支持を取り付けているが、参政党と非常によく似ている。

れいわ新選組代表・山本太郎氏は、メディアが選挙の争点を外国人問題に転換したと批判したが、有権者の中に湧き上がる思いを、参政党が「日本人ファースト」というわかりやすいメッセージで言語化したという意味合いの方が大きいのではないか。

そもそも、参政党を支持する若年層の間ではマスメディアに対する不信感が根強い。TBSの「報道特集」が選挙前に特集企画「外国人政策も争点に急浮上〜参院選総力取材」にて、参政党をネガティブに扱ったことで炎上したが、SNSではTBSの偏向報道だとのコメントが多く、結果として参政党の主張を際立たせる結果となった。

マスメディアが世論形成に力を持っていることは間違いない。しかし、今や若年層を巻き込むほどの力強さには欠けているのも事実だ。

再生の道の代表・石丸伸二氏は議席が獲得できなかった要因のひとつとして、地上波の党首討論に呼ばれなかったことを挙げたが、有権者の中で優先度が低いといわれる「教育」を最優先にしたことが主な敗因なのではないか。

選挙戦略においてはより多くの有権者に刺さる、わかりやすいテーマが必要なのだろう。

SNSに親しむ若者は、心の声や不満を代弁する力強いリーダーを求めていた。参政党の神谷宗幣代表は、「投票したい政党がない」という有権者の心を巧みにつかんだ。

選挙戦において党員の「核武装」発言など、多くの賛否を巻き起こし、今回の参院選の台風の目となった参政党。今後の国会での動向が注目される。

取材・文/不破聡