退職代行が突出して多いのはこの業種 

本人に代わり、勤務先に退職の意向を伝える「退職代行サービス」を使って退職する若者が増えている。今や離職・転職したいと思えば、転職サイトに登録すれば多くのスカウトメールが届き、代行を使えば簡単に退職もできる。

マイナビの調査によると、「退職代行サービスを利用した人がいた」と回答した企業は、2020年は16.1%だったが、2024年(1~6月)は23.2%に増加(「退職代行サービスに関する調査レポート」2024年7月)。

また、同社の「2025年卒企業新卒内定状況調査」(2024年9~10月調査)によると、「これまで自社の社員が退職する際に、退職代行業者から連絡を受けたことがある」と答えた企業は31.0%と3割を超えている。

中でも上場企業は44.0%と大企業ほど多い。業種別ではどの業種も30%前後であるが、「小売」は52.9%と突出して高くなっている。

退職代行依頼が増える背景にはその利便性がある。本来は、上司に退職の意向を伝え、退職届を提出し、人事部を通じて所定の手続き(貸与物の返還、離職証明書の発行など)を取る必要がある。

退職代行業者は2~3万円の手数料を支払えば、本人に代わって「退職の通知」と貸与物の返還などの事後処理をしてくれる。

何より上司や同僚、人事に対する退職理由の説明など人間関係のわずらわしさがない。コスパ、タイパを重視する今の若者にとっては便利なツールとなっている。

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退職意志も伝えられないなんて「社会人失格」なんじゃないのか 

一方で、退職代行サービスを利用する人に、「辞めたければ自分の意志を直接伝えれば、いつでも辞められるのに、その勇気と意志がないのは社会人として失格だ」という批判的な意見も多い。もっともな意見だが、退職代行を利用する若者にとっては相応の理由もある。

1つはブラック企業からの離脱だ。ブラック企業の中には「辞めたくても、辞めさせてくれない」ところもあれば、労働法規を無視した長時間労働やパワハラ、セクハラ体質の企業も少なくない。

例えば退職代行業大手のアルバトロスが運営する「モームリ」の発表によると、今年4月1日の入社式当日に依頼してきた新入社員の理由には「社長が入社式の最中に新卒社員ともめて、みんなの前で怒鳴ったことに加え、廊下に出して『なめてんのか』と説教」(事務関連・女性)というものもある。

また、4月11日には新卒新人が退職理由に「入社から間もなく背後から突き飛ばされる、複数回にわたる長時間の叱責、肩を叩かれながらの詰問」を挙げている。

7月8日の事例でも、課長が他の従業員がいる中で「会社に来る意味はない。お前は給料泥棒だ」「給料もらって恥ずかしくないの?なんで平気でもらえるか理解ができない。お前病気なんじゃないの」と罵倒され、会社に行くのが怖くなったという理由もある。

「モームリ」の担当者が人事担当者に伝えると「『課長からパワハラですか……』と言葉に詰まっていました」という。