今の若者は「入社」より「就職」意識が強い
笑っている場合ではない。今の若者は「入社」より「就職」意識が強く、職務へのこだわりも強い。仕事のイメージが理想と違っていれば簡単に辞めてしまう。
特に今年の新人はその傾向が高い。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は2025年入社の社員の特徴の1つとして「恵まれた環境を当たり前と思う感覚の世代」と指摘する。
「25年卒は売り手市場の中で、初任給アップの恩恵を受け、配属先を固定してもらうなどの企業の細かい配慮が目立った年でもあった。
何かをしてもらって当然とか、自分たちがチヤホヤされることを当たり前と思っている感覚が23年卒、24年卒に比べて高い可能性がある。初任給を大手企業並みに上げられない中堅・中小企業にはそのぶん育成など、より高い配慮を求める可能性がある」
つまり、配慮が足りない、優しくないと思えばこの会社では無理と決断する可能性もある。しかも25年卒は就活中に5~6社の内定をもらった学生も多い。平野所長は「5社以上の重複内定者の割合が24年卒以降、年々上がり、内定バブルの状況になっている」と語る。
入社3カ月で離職した場合のコスト損失は187万円
あいまいな説明で入社までこぎつけたとしても、雇用契約を結ぶ際には企業に「労働条件明示義務」があり、さらに2024年4月から労働基準法15条の明示義務の労基法施行規則が改正され、雇入れ直後の就業場所および従事すべき業務に加えて、就業場所および従事すべき業務の「変更の範囲」についても明示が必要になった。
採用に多額の予算を投じながら、労働条件の正確な説明を怠ったことで退職されるのは企業にとって大きなリスクとなる。退職代行を使った早期の退職が増えることになれば企業の採用のコスパも悪化する。
エン・ジャパンの調査によると、入社後3カ月で離職した場合のコスト損失は、1人あたりの採用経費が62.5万円、在籍費用が112.5万円、教育研修費が12.5万円。総コストは1人あたり187.5万円と試算している。
入社しても早期に一定数が辞めることが恒常的になると、それを見込んで内定・採用数を増やすことになり、さらに採用コストが高まる。採用活動におけるミスマッチの解消が企業にも求められている。
文/溝上憲文