忠犬に対して今、国防省の内外から不満
「プーチンの忠犬」こと、ワレリー・ゲラシモフは2012年から14年にわたり参謀総長の座にあり、2023年からは侵攻作戦の総司令官を兼ねる。ソ連期を含めても異例の長期在任だ。
かつて西側では、軍事と非軍事の手段で敵国を内側から揺さぶるという彼の論文が「ゲラシモフ・ドクトリン」と呼ばれ、ハイブリッド戦争の理論家として恐れられた。
だが今、その"知将"が指揮するのは、ドローンに翻弄されながら兵士を正面攻撃にすりつぶす旧態依然の消耗戦だ。
プーチンの意向を先読みし、都合のいい戦果ばかりを報告し続けてきたその姿は、もはや理論家ではなく「忠犬」そのものである。
23年に「ゲラシモフの首」を求めて反乱を起こしたプリゴジンは謎の墜落死を遂げ、糾弾された当人は座を守り抜いた。忠誠こそがプーチン体制で生き残る道だ。だが、その忠犬に対して今、国防省の内外から不満が噴き出している。
軍の逆鱗に触れた「非軍人の国防省トップ」の発言
そのゲラシモフが追い落としに動いているとされるのが、文民出身のアンドレイ・ベロウソフ国防相。そもそもベロウソフは軍人ではない。
マクロ経済分析の分野で頭角を現し、腐敗にまみれた国防省に送り込まれたテクノクラート(経済などの高度な専門知識を持ち、その知見を活かして政策立案や行政・管理運営に携わる技術官僚)だ。24年5月、プーチンはこの異色の文民に軍需の巨大な財布を託した。
亀裂が表面化したのは、ウクライナ軍が新型ドローンで反撃に転じた今年3月とされる。ロシア独立メディアが伝えるところでは、ベロウソフはプーチンと差しで向き合い、前線が押し込まれつつある苦しい現実をありのままに伝えた。それ自体は当然のはずの戦況報告だったが、軍の逆鱗に触れた。
ゲラシモフにしてみれば、これは越権であり抜け駆けだった。大統領に戦況を報告する役回りは、伝統的にゲラシモフが独占してきたからだ。













