新入社員のリアリティショック「2つの要因」 

こうした人格を傷付けるようなパワハラ体質の企業や、執拗に慰留し「辞めたくても、辞めさせない」企業に対して退職代行を利用することに異論はないだろう。

そしてもう1つ、特に新卒の新人が退職代行を利用する背景には「リアリティショック」(理想と現実とのギャップの衝撃)がある。

新入社員研修など企業研修を手がけるALL DIFFERENT事業開発推進本部コンテンツマネジメント部の宮澤光輝ユニットリーダーはこう指摘する。

「リアリティショックには2つの大きな要因がある。1つは会社側の問題として就活段階や内定出しの段階で不都合な事実を隠すことで起きる。聞いていない入社後のハードな研修であったり、会社が言っていた労働環境と食い違っていたりすれば話が違うと思ってしまう。

もう1つは新入社員側が過度な期待をしてしまい、思い描く仕事や職場でなかった場合だ。例えば、会社に入ったらすぐに責任ある格好いい仕事を任せてもらえると思っていたら地味な仕事だったり、先輩や上司は仕事を優しく教えてくれるだろうと思っていたらそうではなかったというケースなど、ショックを引き金に離職してしまう」

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「思ってた業務と違った」事前の説明と違うと退職の引き金に 

実際に前出の「モームリ」が公表している退職理由にも「入社前に給料は26万あると聞いていたが、入社後20万円と書かれた契約書にサインさせられた」(販売業・女性)、「入社後に休日出勤の必要があると説明を受けた。入社前はそのような説明は一切受けていなかった」(教育関連・女性)という事例もある。

昔のように入社させればなんとかなるという時代ではない。これは明らかに正確な情報を周知しなかった人事部や採用担当者のミスである。今の若者は残業時間や休日など労働条件に敏感であり、事前の説明と違うと退職の引き金になる。

もう1つの若者の過度な期待によるリアリティショックの事例としては「思っていた接客業務と違い、やりがいを感じる機会がないと感じた」(飲食業・女性)、「入職前の研修があり、マナーやコミュニケーションなどの5時間ほどの研修で講師の方が脅しのような言葉、看護学生と社会人とは違うとの言葉があり、自信をなくしてしまった」(医療関連・男性)という理由もある。

また、「面接で聞いていた職務内容と実際の勤務内容が異なっていた。人間関係も良好ではなかった」(「モームリ」2025年7月1日の利用事例から)というのもある。この会社にモームリの担当者が連絡すると「担当者の方は大笑いされ、『なぜ自分で言えないんだろう』と、退職理由を聞かれずに終了しました」という。