ポストシンボリックコミュニケーションとは何か

まずポストシンボリックコミュニケーションの定義を確認しておこう。「ポスト」とはこの場合「超えて」という意味であり、すなわち言語や記号といったシンボルの領域を超えて、深部感覚を含むすべての感覚を活用することで可能となる、直接的で没入感のあるコミュニケーションのことを指す。

私たちのコミュニケーションの手段は言語だけに限らない。そもそも、私たちが非言語コミュニケーションを初めて経験するのは出生時である。母親と胎児の心拍の同期はコミュニケーションの原初的なスタイルであり、成長するにつれ、人間はボディランゲージ、表情、声色、触覚、笑い、泣き声、顔の血流、匂いなどを通じて非言語的に情報を伝達する。

さらに、ダンス、スポーツ、恋人との親密なつながり、宗教体験など、これらはどれも言語を超えたコミュニケーションであり、参加者間の深い絆と理解を生み出すことができる*2

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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深部感覚を共有し拡張する*3

現在、ポストシンボリックコミュニケーションのためのテクノロジーは爆発的に進歩しており、実用化まであと一歩というところまで来ている。

たとえば脳の神経細胞が発する電気信号をコンピューターに伝えるために、身体に装着するインターフェースである脳コンピューターインターフェース(Brain–Computer Interface, BCIあるいはBrain–Machine Interface,BMI)が挙げられる。

BMIは考えるだけでマウスやキーボード操作、ロボットアーム操作を可能にし、さらに将来的には思考、感情、経験を心から別の心へ直接共有できるようになると言われる。