「ラグビーは仲間作り」

関東学院大ラグビー部は、まさにワンマンチームだった。元理事長で「総監督」としてラグビー部を支えた内藤幸穂(さち ほ)さん(2014年死去)は、自著につづった。

〈ラグビー部はあまりに基盤が弱い。すべてが春口氏の下に集約され、他人が意見を差し挟む余地がまったくない〉(『新生 関東学院大ラグビー 再び栄光をめざして』より)

春口さんも「選手の勧誘や指導は、自分の存在が前提となっていた」と認める。もし、分業体制だったらどうだったのか。「大麻事件は起きなかったかもしれない。急速に弱体化することもなかったかもしれない」。そう話す一方、「ワンマンで突っ走らなければ、3部のチームを日本一にはできなかった」とも自負する。

写真はイメージです(写真/shutterstock)
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大麻事件時に主務(マネージャー)を務めた竹花耕太郎さんは、当時の監督の言葉が忘れられない。「あいつらは悪くない。悪いのは大麻だ。あいつらを恨むのではなく、大麻を恨め」

「ラグビーは仲間作り」。春口さんは日体大時代の恩師、綿井永寿さん(1998年死去)からそう教えられた。かつてたばこを吸った部員をやめさせた際、綿井さんに長時間諭された。「ラグビーをやめさせるのではなく、たばこをやめさせ、ラグビーを続けさせるのが教育者の役目だろう」

それが大麻を吸った12人へのあいまいな対応にもつながった。「今思えば卑怯だった。ケジメをつけるべきだったが、仲間を守りたかった」

いまだに事件のわだかまりは残る。「人生を狂わされた。自分は被害者だ」との思いも消えないが、「ラグビーは仲間作り」という信念は揺らがない。