「『トライアウト』っていう言い方、好きじゃないんです」
現役を続行したい選手たちが集ってプレーを披露する合同トライアウトもそのひとつである。このトライアウトをNPBが2025年から見合わせると発表したのを受けて、選手会は過去に参加した選手たちにアンケートを実施した。
回答のほとんどが「トライアウトに参加してよかった」というものであった。そこで選手会主催での継続を決めた。
「この制度も2001年から始まって、毎年各球団持ち回りで開催をしていただいて、ちょうど2周り目くらいになったのかな。球団サイドから、『獲得する選手も実際はトライアウトの前に決まってしまっているし、実質的にもうあまり開催に意味がないんじゃないか』みたいな発言もされたんです。
でも昨年は二人ほど、トライアウトのプレーを見て入団が決まった選手がいたんですよ。それで選手に諮ると、『やっぱりやめてほしくない』という声が圧倒的に多かった。なので、可能性があるんだから選手会としてこれはやっていこうと決めました。
NPBに残れる選手が何人いるかは分からないですけど、独立リーグ、社会人の関係者も見に来るし、次の世界にもつなげられるようなものにできればという想いはあります。
もちろん開催予算もかかりますし、その辺を不安に思う声もありましたけど、協賛していただける所もあって十分やっていけると思います。何より選手会としてまだ挑戦したいと思っている選手がいるのなら、意向に沿ってそれはサポートしたいです」
會澤からは選手の尊厳に対するリスペクトが随所に感じられる。制度の在り方だけではなく、言葉の使い方にも言及するのである。
「僕は『トライアウト』っていう言い方があんまり好きじゃないんです。アウトって付いてるじゃないですか。『トライチャレンジ』とかだったら、前向きですよね。再挑戦なんだから、メディアも含めて呼び方をポジティブなものにしてほしいです。
FAの見返りの『人的補償』(FAで選手を獲得した球団がプロテクトした選手以外から一人、相手球団に譲渡するシステム)も人身売買みたいじゃないですか。
実際にプロテクトから外された中で自分もチームを出たいと思っている選手もいるわけで、僕個人は、FA移籍の代償としてお金の代わりに人が動く制度はあってもいいと思うんです。
ただ、人間の補償じゃなくて、相手球団が欲しい選手と思って指名するんだから、別の呼び名があるんじゃないかと思うんです」
振り返れば、中日から巨人にFA移籍した野口秀樹の「人的補償」で落合監督に指名された小田幸平という好例がある。彼はそこから巨人時代の3倍以上の出場試合数を記録し、17年の現役生活を全うしたのだから、ひとつのキャリア成功例と言えようか。