3代続けて捕手が選手会長
會澤翼は、水戸短大附属高校(現水戸啓明)1年生のときから強肩強打の捕手として注目を集め、2006年の高校生ドラフトで広島カープから三位指名を受けた。ドラフト同期には、同じくカープの前田健太、楽天の田中将大、巨人の坂本勇人らがいた。
一軍定着までほぼ8年を要しながら、2017年からは赤ヘル不動の扇の要として大きな存在感を放った。捕手らしい強いリーダーシップとコミュニケーション能力でチームメイトからの人望も厚く、2018年からはチームの選手会長に就任して選手の意見をまとめ上げて幾多の要望書を球団に提出した。
「要望書の作り方も自分で調べるところから始めましたよ。選手からの要求はたくさん出るのでまず『ブルペンの椅子をもっと座りやすいものにしてほしい』とか、そういう小さいところから着手していきました」
折衝の学びは想像以上に大きかったという。
「交渉事でテーブルについて話し合うといろんなことが分かってくるんです。あ、今、球団はこういうことを考えているんだとか、こういう交渉の仕方をすれば、球団も理解してくれるんだとか。やはりこう、周りを見ながらやっていくっていうところも含めて勉強になりました」
労を惜しまず、選手のために精力的に動く會澤の存在は12球団選手会の中でも目を引いた。歴代会長は皆、この仕事に誇りと愛情を持っていた。それゆえに任期を終える頃には、自身が信頼できる人材を指名する。
會澤に9代目労働組合日本プロ野球選手会会長・炭谷銀仁朗から、自分のあとを託したいというオファーが届いたのは2021年の秋口であった。
「その前に事務局長サイドから打診もあったんですが、そのときはまだ考えさせてほしいと言ったんです。やはり現役としてプレーに集中したい気持ちはありましたから。
でも炭谷さんから電話をもらって『大変なのは大変なのだけど、お前がやってくれるか』と言われて、そのときはもう『分かりました』とすぐに返事しましたね」
ポジション別に見ればくしくも8代目の嶋基宏(楽天)から、3代続けて捕手が選手会長となった。現職の選手会長には、歴史を訊くと言うよりも今、取り組んでいる事案について取材を敢行した。