「『父親休暇リスト』も導入したい」
所属する球団の環境に馴染めない選手のケアとして「現役ドラフト」を実行した一方で、トップクラスにいる選手の目配りとしてWBC出場に向けての補償問題についても要求を掲げている。
「不安なく日本代表に行って思い切ってプレーしてもらいたいというのがあります。それでなくても代表戦はプレッシャーがあって心身ともに大きな負担がかかります。そこでもしも怪我をしたときに損失補償がないとなると、家族もいますし心配が尽きない。
そのあたりの不安は代表選手の話を聞く中で出てきたので声をあげました。国を背負って試合に臨むことはすごく名誉なことです。そして同じくらい大事なのがやはりシーズンだと思っています」
プロアスリートの年俸を払っているのは、所属のチームであり、あくまでも日常の基盤はレギュラーシーズンにあるという考えだ。もはやW杯の常連国となった日本サッカーの世界においても同様の命題があり、JFA(日本サッカー協会)とJPFA(日本プロサッカー選手会)の間でも長年にわたって代表選手の負傷補償の問題については議論が交わされてきた。
代表戦で怪我をして公式戦を欠場する事態に陥った場合、その補償はどうなるのか。
「新井(貴浩)さんが会長の時代にWBCサイドと闘ってスポンサー問題を解決させられたじゃないですか。財源を確保したら、次は選手の待遇改善で、怪我したときの最低補償をしてくれというのは日本代表がある限り僕はずっとNPBに言い続けていこうと思っています」
會澤のフットワークの軽さは、恒常的に取り続ける選手たちとの対話の中身と、起きた事案に対する対応の速さに表れている。
2023年に安楽智大(当時楽天)による後輩選手に対するパワハラ騒動が表面化した際、「これは楽天だけの問題ではない」として事務局長の森忠仁とともにNPBとの事務折衝に臨み、全球団による調査とハラスメントの相談窓口の設置を提起している。起きた「事件」を他人事にしていないのだ。
「僕らの若い頃は理不尽なこともたくさんありましたけど、今の時代はハラスメントは大きな社会問題にもなっていますし、『予防できるところは予防していきましょう。何かあったら、僕ら選手会は対応しますよ』と折衝しました。この問題はスピードが求められるので、相談窓口は2024年4月にはもう設置できていたかと思います。
ハラスメントの窓口はNPBにもあるし、各球団にもあるし、選手会のものを加えて全部で3つあるんです。人によっては、行きづらいところもあると思うので選手には『言いやすい所に言ってくれ』と告知しています。
僕は、選手に対してプロはこうあるべき、という求めよりも彼らに自由度、選択肢を増やしてあげたいというのがあるんです。大谷翔平君がメジャーで利用した『父親休暇リスト』もそうですよね。これの導入も考えています」