国が地方自治体に責任を押しつけている実態
川口市の奥ノ木信夫市長は、仮放免制度に関する異例の要望書を国に提出した。その中には、「不法行為を行う外国人には法に基づく厳格な対処」「仮放免者に最低限の生活を維持するための就労許可」「医療や行政サービスの提供に国が責任を持つべき」といった要望が含まれている。
市長は「仮放免で帰る人の割合すら国は明示しない」と不満を述べ、国が地方自治体に責任を押しつけていると厳しく批判している。
市が把握するだけでも、川口市内の仮放免中のトルコ国籍者は900人以上、多くがクルド人とされる。彼らの生活実態は制度上の規定とは大きく乖離しており、就労制限があるにもかかわらず多くが建設や解体業などに従事している。
実際、現場で働く日本人作業員の証言では、「彼らなしでは業務が回らない」と語られるほどに依存が進んでいる。
制度そのものの信頼性が崩れてしまう
これまでに紹介してきたような実態を考えると、日本の難民認定制度が一部の人によって悪用されている現状に対して、もっと厳しく対処していく必要があるということは明らかである。
難民制度は、本来、戦争や迫害などで母国にいられなくなった人たちを守るためのものである。しかし今、日本の制度を利用して、働くために虚偽の理由で難民申請をする「偽装申請」や、許可なく働く「不法就労」などが問題になっている。
このような行為を放置すれば、制度そのものの信頼性が崩れてしまうだけでなく、本当に保護が必要な人たちへの支援も行き届かなくなってしまう。
だからこそ、日本の入管や政府は、偽装申請や不法就労を絶対に見逃さないという「はっきりとした強い姿勢」を打ち出すことが求められている。それと同時に、必要な法の執行を丁寧かつ厳格に進めていくことが不可欠である。
最終的にめざすべきことは、すべての人が安心して暮らせる社会を実現することにある。外国人であっても日本人であっても、きちんと制度を守って生活する人が、不安や不満を抱かずに暮らせる環境を整えることが大切だ。
そのためにも、制度の乱用を見過ごさず、真面目に暮らす人が損をしない社会をつくるために、日本の入管行政は今こそ真剣に行動しなければならないだろう。
文/小倉健一