包丁を取り出そうとした妻が叫んだ言葉
「そこから私がご飯を食べさせて、お風呂に入れて、寝かしつけて……という生活が2年ほど続きました。彼女は浪費もひどく、月に30〜40万円ほどカードで使ってしまう。それを指摘すると怒鳴られる。“これはもう子どもにも悪影響だ、結婚を続ける意味があるのか”と真剣に考えました」
元妻の行動で特に印象的だったのは、皿を投げつけられたことだという。
「理由はもう覚えていませんが、彼女が激昂して1枚、2枚と台所から皿を投げてきたんです。さらに包丁を取り出そうとするので、たまらず抑えようとすると、今度は突然『助けて!殺される!』と叫び出した。逆にDVをでっちあげられそうになったのです」
そんな中、Aさんの周りでも家庭をもつ人が増え、それぞれの話を聞くうちに、「自分の家庭は異常な状況なんだ」とハッキリと気付くことができたという。そして、離婚を切り出した。
元妻は離婚を拒否したが、Aさんは意思を変えず、まずは別居を選択。しかし、ここで最大の誤算が起きる。元妻が子どもを連れ去ってしまったのだ。
Aさんは、元妻がひとりで子どもを育てるのは非常に危険だと考え、警察や児童相談所、行政など複数の機関に相談を持ちかけた。しかし、いずれの機関からもまともに取り合ってもらえなかったという。
「妻が怒鳴っている音声や、荒れた室内の写真・動画など、状況を記録した証拠を提示しました。それでも、『これは一部の切り取りに過ぎない』『怒鳴り声を止めなかったあなたも同罪だ』などと言われ、まるで私がクレーマーであるかのような扱いを受けました」
裁判においても、こうした証拠は十分に認められず、Aさんは深い無力感を覚えたという。
「全体として、“男性がDVを受けている”という事実そのものが、非常に軽視されていると感じました」
最終的に離婚は成立したが、親権は元妻が持つことになった。加えて、取り決められていた子どもとの面会交流も一方的に反故にされ、Aさんはすでに1年以上、子どもに会えていない。
そしてその間も、コロナ禍で残業が非常に多かった時期の年収を元に設定された養育費を、月に30万円近く支払い続けている。
「自分へのDVはまだ我慢できました。でも、子どもに会えない状況は本当に辛いです。ふと、“何のために働いているんだろう”と考えてしまう。死を考えたこともあります」