湾岸エリアの3割は海外投資家所有だが…
タワマンは「実需」と「投資」の2つの需要の受け皿になっている。
富裕層やパワーカップルなどが快適な居住を求めて購入する一方、投資家が賃貸や将来の値上がり益に期待して一時的に取得している。近年では、円安によって日本の不動産価格が相対的に下がり、海外の投資家が購入するケースが増えた。マンションリサーチ社の調査によると、東京湾岸エリアのタワマンの3割は外国人の所有だったという。
特に目立ったのが中国人投資家の“爆買い”だ。中国の不動産市況が悪化し、価格が安定的に推移する日本の不動産に目をつけたと言われている。圧倒的な資金力を武器に都市部の良好な不動産を買い漁り、日本での活動拠点としての利用や賃貸による運用を行なっているのだ。
しかし、その中国はトランプ関税の影響で景気が悪化した。2025年5月の企業の生産動向を示す「工業生産指数」は前月比で伸び率が0.3ポイント低下した。1月から5月までの不動産開発投資が前年同期間比で10.7%下落しており、不動産を中心とした内需はすでに低迷している。
そのうえ、輸出に支えられていた企業の生産活動が行き場を失うと、深刻な不景気に陥りかねないのだ。
おまけに中国政府は海外で得た所得に対する課税を強化している。2024年から超富裕層を対象とし、投資収益の20%に課税する方針を示した。現在では庶民にも監視の目を広げているという。中国政府が国内の景気悪化を懸念しているのは明らかで、課税の強化によって景気刺激策を推し進めようとしているのだろう。
投資家やビジネスマンが景気の停滞で手元資金の必要に迫られたところに、政府からは課税強化策を打ち出され、足元では円高がじわり進行するとなれば、今が日本の不動産投資から手を引く絶好のタイミングとなる。中国人投資家の買い支えがなくなれば、タワマンバブル崩壊も決して絵空事ではないのだ。