解体したくてもできない巨大廃墟が次々と 

「何も報われないのが悲しいんです。それが一番辛かった」

そう語るのは、ライターの吉川祐介氏。吉川氏は投機目的で開発された末に廃墟化が進む「限界ニュータウン」など、「放棄不動産」についての取材を続けてきた。

最新刊『バブルリゾートの現在地』は、主に新潟県を中心とした、バブル期に大量に建設されたリゾート物件の「いま」がまとめられている。本のサブタイトルは「区分所有という迷宮」。なぜ迷宮なのか。

エクストラクラブ苗場。建物裏はガラスが破損している箇所もある (写真は吉川氏の提供、以下同)
エクストラクラブ苗場。建物裏はガラスが破損している箇所もある (写真は吉川氏の提供、以下同)
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本書で扱われているリゾートマンションや会員制リゾートクラブ、区分所有型ホテルなどの施設の多くは「区分所有」、あるいは「共有持分」という投資方法が採られている。これは複数人でその建物や土地を分割して所有するもので、例えばリゾートマンションであれば、各部屋ごとに所有権者が異なる。

それどころか、会員制リゾートクラブでは、一部屋を10分割して会員同士で共有したり、テニスコートを何百分割もして販売されたような例も見られ、一つの施設の権利関係者が膨大な数におよぶケースも多い。

こうした物件の多くは投資目的で売られたもので、購入者は実際にその施設を利用すること以上に、所有分の配当を期待していた。

しかし、多くの物件は売却後の運営が十分に考えられていないこともあって破綻。本来ならば解体されるべきだが、権利や管理が複雑すぎて解体もできない、まさに「迷宮」状態だという。

「本来、集合住宅の運用は所有者の『合意を形成する』ことが重要ですが、これらの物件は投資のために買われたので、持ち主同士で面識がなかったり、管理組合が機能していなかったりするケースも多く、合意形成に向けた音頭を取る人がいないという問題が生じています」(吉川祐介氏、以下同)