実はカフェインは「医薬品」

「昨日レポート課題を二つ仕上げなきゃいけなくて、ほとんど寝てないの。講義中寝落ちしないように、今朝エナジードリンクを1本飲んできたの」「今日は、語学の小テストが1限からあるので、気合いを入れるためにブラックコーヒーを3杯飲んだから、ちょっと気持ち悪い」「コーヒーや栄養ドリンク剤って記憶力を向上させるんだって⁈」、学期末になると学生たちのこんな会話を耳にする機会が増えます。

それらの会話を聞いていて、「疲れがタモレば、ユ○○ルだ!」「ファイト!一発!」「24時間戦えますか?」といった栄養ドリンク剤のCMキャッチコピーがふと頭の中で蘇ります。

そこで筆者の研究室の学生たちにこれらのキャッチコピーを知っているか聞いてみたところ、「聞いたことはありますが、働き方改革が叫ばれている今では、そんなキャッチコピーはブラックですよ」と即答されました。

ただ、「疲れているときや集中したいとき、また風邪をひいているときには、コーヒーやエナジードリンク、栄養ドリンク剤をたまに飲むことがあります。でも、体調や飲む量によって気分が悪くなったり、友人のなかには、ほんのわずかなコーヒーですら気分が悪くなる人もいます」という答えもありました。

写真はイメージです(画像/Shutterstock)
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コーヒーやお茶、お酒、そしてたばこは、世界の三大嗜好品と呼ばれます。古くから、コーヒーやお茶の摂取によって、眠気がおさまったり、集中力が高まったりすることは経験的に知られていました。そのため、コーヒーやお茶に関する研究の多くは、主な成分であるカフェインの睡眠や覚醒、記憶力や運動能力への影響などについて焦点が当てられていました。

カフェインは、ドイツの化学者フリードリープ・フェルディナント・ルンゲによってコーヒーから単離されました。ちなみにコーヒーの有効成分を抽出してみるようにルンゲに進言したのは、ドイツの詩人ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテだったともいわれています。

カフェインは、コーヒー豆以外に茶葉(緑茶、ウーロン茶、紅茶)やカカオ豆に含まれています。またカフェインは苦いため、風味付けの食品添加物とともにエナジードリンクや栄養ドリンクに添加されています。さらに、風邪薬や酔い止め、頭痛薬や鎮咳去痰薬(咳を鎮め痰を喉から排出しやすくする薬)にも配合され、医薬品としても用いられています。

たとえば、粉から淹れたコーヒー100ミリリットル中には、60ミリグラムのカフェインが含まれています。同量の煎茶には20ミリグラム、紅茶には30ミリグラムのカフェインが含まれています。エナジードリンクや栄養ドリンク剤、眠気覚まし用飲料のカフェイン濃度には幅があり30─300ミリグラムとなっています。一方で、頭痛薬や鎮咳去痰薬には、製品によって異なりますが、1回の摂取量あたり80─100ミリグラム程度含まれています。