眠らせている知的財産の発掘と活用
フジテレビとグループ全体が保有するIP(知的財産)も、今後の収益の柱となり得る大きな資産だ。このIPに関して言えば、FODと同じでフジが本腰を入れて取り組んでこなかったため、宝の持ち腐れとなっていた感があった。
もっとも、フジ内部でも資産活用の必要性という認識はあったのだろう。2024年10月、フジはFCP(フジ・コンシューマ・プロダクツ)という合同会社を設立し、遅ればせながらIP活用の本格展開に乗り出している。
いまは中居氏の問題の陰に隠れてしまってはいるが、きちんと機能すれば経営を支える大きな柱になることは間違いない。
フジの清水賢治社長は、アニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』『ドラゴンボール』『ちびまる子ちゃん』『ゲゲゲの鬼太郎』『幽☆遊☆白書』『みどりのマキバオー』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』といった、フジテレビが手がけたアニメの多くに関わっており、業界に精通している。
こうしたIPの活用には明るいはずで、その点は今後のフジにとって明るい材料のひとつと言えるかもしれない。
前述のFCP設立時には、会社の設立趣旨としてこんな説明があった。
「ガチャピン、ムックをはじめ、タケちゃんマンや仮面ノリダー、バカ殿、ゴリエなど、フジテレビはいままで多くの人気キャラを生み出しました。これを強みとし、FCPは自社保有のキャラクターを活用したIP 事業を展開。そしてその価値を最大化するライセンスビジネス分野を強化していこうという目的で設立されました」
実際、フジは『めざましテレビ』の〝ちいかわ〟などの売れるコンテンツを持っているし、古くは『トリビアの泉』の〝へぇ~ボタン〟、『脳内エステIQサプリ』の〝モヤッとボール〟などのアイテムを商品化し、収益につなげている。
ただ、フジの持っているIP全体を見渡すと、それらの成功は「たったそれだけ?」という評価でしかないのだ。
ガチャピン、ムックはその代表例だが、予算を潤沢に使えた時代の番組から生まれたキャラクターは、国民的な知名度を持っているものが多く、その価値は非常に高い。
現在、世界でもっとも売上金額の大きいIPコンテンツは「ポケモン」で、2位が「ハローキティ」だ。その後は「くまのプーさん」「ミッキーマウス」と続くが、ポケモンやハローキティの売上は世界で10兆円を超えている。強力なIPはそれほど大きな収益を上げる潜在能力があるということだ。
パチンコ・パチスロ機の開発・販売を手掛けるフィールズが「ウルトラマン」の円谷プロダクションを買収し、子会社化してIP活用に成功しているように、時代は古くても知名度のあるIPの価値は落ちない。
フジが眠らせているIPをどう発掘し、活用していくか。これは最優先で取り組むべき事項である。
文/堀江貴文 写真/Shutterstock