広告収入からの脱却の鍵はサブスク強化
フジテレビが持つ価値は、過去の番組にとどまらない。これまで構築してきた番組制作能力、サプライチェーンとしての機能は一朝一夕に入手できるものではなく、それはサブスク展開においても非常に有利なポイントになる。
現在、ネットフリックスのオリジナルドラマは非常に大きな予算をかけている。おそらく、地上波のテレビと比べ3倍、4倍のコストをかけているはずで、日本のクリエイターは、本来の価値より高く買われていると言ってもいい。新興のネットフリックスにとって現状、武器となるのはカネの力しかない。
昔のように給料も上がらなくなったテレビ局には「ネトフリに転職できないかなあ」などとボヤいている社員もいるというが、フジテレビにはそこまで高いコストをかけなくても良質な番組を作るノウハウや人間関係があり、それはネトフリが逆立ちしても勝つことのできない強みなのである。
フジテレビは、サブスクの強化によって「広告収入」という昭和の時代から続く一本足打法から脱却しなくてはいけない。
今回のフジテレビ問題で、他局から「意見をお聞きしたい」とお声がかかり、番組に出演したことがある。そのとき僕はこんな内容のことを話した。
「これまでお付き合いでフジテレビに広告を出してきたスポンサー企業も、今回の一件で撤退したのだったら、今後はもう出す必要がなくなったのではないですか」
そうしたらADが顔を真っ青にしてこう言ってきた。
「堀江さん、そういうことは言わないでください……」
おいおい、フジだけじゃなくて君らもそうなんだよ。何もスポンサーを捨てろと言っているのではない。スポンサーの顔色だけをうかがう世界は、もう消えていくことを分かってほしい。
仮にスポンサーが離れても、テレビ局と企業の付き合いが完全に切れるということではない。むしろそこから生まれるチャンスもあると僕は考えている。
そもそも、スポンサー離れの根底にあるものは地上波の弱体化である。
長年、CMを出稿してきた企業も、地上波における広告効果の測定が難しくなっていることを受け、オウンドメディア(自社で運用するメディア)に軸足を移すケースも最近では珍しくない。トヨタ自動車の「トヨタイムズ」などが好例だ。
ただ、一般の企業にはそのオウンドメディアをどう運用していくか、いまはまだノウハウがない。その点、テレビ局は映像で何をどう伝えるか、最大に効果を上げる方法を熟知している。
僕は、テレビ局がただ単に「広告を出してください」とお願いするのではなく、企業と組んでオウンドメディアの構築サポートに回り、そうした専門の部署を作って人材を配置し、収益をあげられるシステムを作ればいいと思うのだが、テレビマンはプライドが高いせいか、そうしたことはあまりやりたがらないようだ。