論文指摘の「セレブリティ化した政治」と似ている石丸手法

研究では、こうした政治スタイルが“反汚職”や“古い政治からの脱却”といったスローガンを多用しながらも、具体的な政策よりも映像・SNSでの見せ方に依存している傾向を強調している。 

また、有権者の中でも特に20代~30代の若年層は、候補者の過去の実績よりも人柄や発信内容に強く引き寄せられる傾向があるとされている。実際、調査では「映像の印象」で支持を決めたと答えた若年層が58.2%に上った。 

支持率2%の衝撃! 石丸新党「公認辞退者、続出」先行する自己ブランディングに現実は追いつくのか _3
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石丸氏が行うYouTubeでの面接公開やSNS発信、そして候補者の年収や職歴を強調する手法は、この論文で指摘された「セレブリティ化した政治」とほぼ一致する。政治の中身よりも演出が先行し、法制度や都市政策といった本来の議論が陰に隠れている。

論文は、有権者の政治リテラシーが低いと、こうした“見せる政治”に流されやすくなると警告している。石丸氏の過去には、対立する市議を公然と非難し、相手を精神的に追い詰めた問題もある。

石丸現象は新しく見えて、実は演出優先のパフォーマンスである可能性が高い。だが、目立つことと、政治の本質を語ることは別物である。注目を集めるだけでは、民主主義の信頼は築けない。政治が「見せ物」になった瞬間、本質は失われる。

2025年4月に行われた滋賀県彦根市長選では、石丸氏が再三応援に入った現職候補が落選しており、石丸氏の応援が必ずしも票に結びつかない事例も出ている。

 石丸氏の応援が必ずしも票に結びつかない事例 

彦根市長選で初当選した新顔候補は、石丸氏の応援を強調する現職候補に対し、ミニ集会を重ねて対話を重視する戦い方を選び、「彦根のことはひこね市民で決めよう!」と書いた政治活動用ビラを陣営が配り、対抗軸を浸透させた。

現在の「再生の道」に対する低い支持率は、都議選での多数擁立という積極的な動きと対照的であり、具体的な政策の不在や、前職市長時代の様々な問題が影響している可能性は否定できない。

先の、選挙ドットコムとJX通信社共同で実施した調査では、「再生の道」への期待度について「どちらともいえない」と回答した層が電話調査で32.8パーセント、インターネット調査で25.0パーセントと、一定数を占めていた。これは「期待する」という明確な支持に至らない層が多く存在することを示しており、今後の情勢変化の可能性を孕んでいる。

もちろん昨夏の都知事選でSNSを駆使して若年層や無党派層の熱狂的な支持を集めた実績からすれば、表面的な世論調査だけでは捉えきれない隠れた支持層が存在することも考えられる。

都知事選の出口調査で、石丸氏の支持層が従来の政治家とは異なる構造を示したように、都議選の選挙戦が本格的に始まり、石丸氏や「再生の道」の候補者たちがどのように戦うか、それに対する有権者の反応がどうなるかによって、実際の趨勢は大きく変動する可能性がある。

選挙が始まってからの実際の情勢や、投開票日に実施される出口調査の結果を見て初めて、石丸氏率いる「再生の道」の真の姿と、有権者の評価が明らかになるだろう。

文/小倉健一