他党からは「何をしたいのか分からない」という批判
再生の道の党方針は、議員の任期を2期8年までとする制限のみであり、都議選では具体的な政策を掲げないという異例の方針を取っている。他党からは「何をしたいのか分からない」という批判も根強い。
これに対し「目的は政治参加を促すこと」であると反論している石丸氏は、当選者数の目標は示しておらず、同じ党内で公認候補が競合する選挙区が6区存在するなど、選挙結果は見通しにくい状況にある。
石丸氏の名前は昨夏の東京都知事選挙で広く知られることになった。現職の小池百合子氏には圧倒的な大差で敗れたものの、約166万票を獲得し、対抗馬と目された蓮舫氏を上回り、次点に食い込む健闘を見せた。都知事選出馬時点での東京での知名度は必ずしも高くなかった。石丸氏はSNSを駆使した選挙戦を展開し、特に若者層からの支持を広げた。
2024年7月の都知事選投票日に合わせて実施された朝日新聞社の出口調査によると、石丸氏に投票した人の内訳は、無党派層が63パーセントと突出しており、支持政党を持たない層からの支持を広く集めたことがわかる。
年代別に見ると、20代が16パーセント、30代が16パーセントであり、10代を含めた30代以下が全体の3割台半ばを占めた。40代、50代もそれぞれ20パーセントであり、50代以下で7割を超えていることから、若年層や中年層が支持層の厚い部分を形成していたと言える。
若手政治家が政治を自己ブランディングに利用している実態
石丸氏はこの選挙戦中、具体的な政策を詳細に掲げるというよりは、「国政の代理戦争などと馬鹿げたまねはやめてもらいたい」などと既存政党を批判する姿勢を強く打ち出し、無党派層や既存政治に飽き足らない層の共感を呼んだ側面がある。
近年の若い政治家について調べた論文「ミレニアル世代における政治商品としてのセレブ人気の意味づけ」(2024年、Ferra Martianら。インドネシア)は、人気やイメージで支持を集める政治の実態を丁寧に分析している。
論文は、若者の政治参加とポピュリズムの交差点に注目したもので、研究者による複数のインタビューと事例調査に基づき、正式な学術誌に掲載された信頼性の高い研究である。
とくに若年層政党の活動家に対して行われた聞き取り調査では、「誠実さ」や「透明性」を前面に打ち出す若手政治家が、それを本質的な政治理念としてではなく、自己ブランディングの一環として使っている実態が描かれている。