遠隔操作で送電を遮断できる可能性がある

ロイター通信は5月15日、中国製太陽光インバーターから製品仕様書に記載のない通信機器が発見され、米エネルギー省が調査していると、関係者2人の証言を報じた。

太陽光発電用バッテリーに不審な通信機器がつけられているのも発見されたという。問題の中国メーカーの名や発見された通信機器の数は伝えられていない。

日本国内の太陽光パネル設置業者Aさんによると、中国製インバーターにはメンテナンスや異常検知のためにリモートアクセスできる機能を持つものがあるという。

太陽光パネル裏に設置されたインバーター ※写真はイメージです(写真/Shutterstock)
太陽光パネル裏に設置されたインバーター ※写真はイメージです(写真/Shutterstock)
すべての画像を見る

ロイターによると、各電力会社はインバーターが中国と通信する事態を想定し、これを防ぐためのファイアウォールを設置しているとのことだが、情報源となった関係者2人は、今回見つかった不審な通信機器を使えばファイアウォールを遠隔操作で回避してインバーターの動作を制御し、送電を遮断して停電をも引き起こせる可能性があると指摘した。

「米政府は今回の件に関して、公式には発表していません。ただ中国製品に安全保障上の問題があることに関し米国では、トランプ第1期政権期の2018年に華為技術(ファーウェイ)など中国製品を政府機関が使うことを禁じた国防権限法が成立し、その後も中国企業への規制強化が図られてきました。

トランプ政権は中国をけん制する材料としてもこの疑惑を公表し、中国製品の輸入規制を強めることも考えられます」(外報部デスク)

ロイターによると、米国の複数の電力会社が既にインバーターの調達先を中国から他国に替える動きが出ている。

政府の関係機関の一部が中国企業のバッテリーの調達を禁じる法案も審議中だ。

広東省深圳に本社があるファーウェイ(写真/Shutterstock)
広東省深圳に本社があるファーウェイ(写真/Shutterstock)

太陽光発電の分野で優位に立つ中国の製品は日本でも広く使われている。

業界団体の「太陽光発電協会」の調べでは2024年に国内で出荷された計約558万kWの太陽光パネルの94.9%は海外生産品だ。

「国内でパネルを扱う33社に取引状況をたずね、時期によって上下しますが21~24社が回答した結果です。回答がない会社は取引実態がないところなどで、おおむね実態を反映したデータです。

海外生産品の生産国の分類はありませんが、観測としては中国産パネルが国内出荷の8割程度を占めています」(太陽光発電協会の担当者)

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

ただ、この数字は報じられた疑惑には直接関係しない。

「インバーターはパネルとは別の部品で、輸入後にパネルと組み合わせます。そのためパネル自体は問題ではないのです。インバーターは生産国別の統計はなく、中国産のシェアは分かりません」

そう話す同協会担当者は「今回の疑惑のような噂が業界で出たと聞いたことはないです。しかし(インバーターが)ネットとつながっている以上、可能性はゼロではないとは思います」と指摘した。