「“中身”が日本製とは限りません」
中国産インバーターは日本でどれだけ普及しているのか。太陽光発電関連製品を扱うB社が証言してくれた。
「私たちの会社は中国製品を取り扱っています。コストが国内産とはだいぶ違いますから。個人的には国内で使われているインバーターは、メガソーラーの場合9割近く、事業所用でも7割、家庭用でも6割ぐらいが中国産だと思います」(B社担当者)
インバーターもやはり、中国産が圧倒的シェアを占めているというのだ。しかもメガソーラーや事業所など、送電停止の影響が大きな発電現場になるほど占める割合が大きいという。
これについて太陽光パネル設置業者のAさんが事情を解説する。
「個人住宅に設置されるお客さんには中国製と聞くだけで『無理』という方もいて、日本メーカーのものを選ばれるときがあります。そういうわけでメーカー別に見れば住宅用は日本のものが6割くらいです。しかし、中国で製造し輸入する日本メーカーもあり、“中身”が日本製とは限りません。
一方、事業所やメガソーラー設置者はそこまで(生産国に)こだわりはないため、中国(メーカー)のほうが断然多いです。機能的に日本製よりかなり優れているからです」(Aさん)
そう話すAさんが挙げた中国メーカー製品の“優れた機能”の一つがリモートアクセスができるというものだ。
「例えばX社のインバーターはアプリで作動状況を監視できます。なので『エラーが起きても、こちらで遠隔で対処ができますよ』という売り文句が使えて、それで安心して買ってもらえるところもあるんです。
今回の疑惑に絡んでは、アプリで監視ができるのだから技術的には(遠隔操作も)あり得る話だろうと察していたけれども、わざわざ口には出さない“暗黙の了解”があった感じじゃないですかね」(Aさん)
B社の担当者は「報道は見ましたが、正直、真偽はまだわからないですね。基本的にインバーターには動作に異常をきたしたときに音を鳴らすなどの監視機能のために通信装置は入っているはずなので、それが不用意な働きをする可能性があるなんて考えたこともなかったです」と話す。
そのうえで疑惑が事実なら「対策としては通信システムだけ日本のものに取り替えるなどするしか方法がないように思います」と指摘した。
「われわれが輸入する際にメーカーに聞いても『問題ないよ』と言われれば正直わからないのが現状です。政府ができる具体的な対策は、経産省が電力会社に中国製品を使うなということくらいでしょうか」(B社担当者)
その経産省は5月23日、衆議院内閣委員会でロイター報道に関する対処を聞かれ、「業界から情報収集を行ない、必要に応じて太陽光発電設備の立ち入り検査などを通じて確認、指導に取り組んでいきたい」と審議官が答弁した。
エネルギー資源が限られる日本にとって、自給可能なエネルギーとして太陽光発電は貴重だ。だが、その供給の足元も技術力の差を背景に中国メーカーが握っていることが見えてきた。疑惑の真偽は別にしても、安全保障上の問題が一つ浮かび上がった。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班