「報道に圧力をかけようという趣旨では一切ございません」というが…

記者会見では、文春に絡む告発は報道の自由にかかわる重大な問題をはらんでいるとの指摘も出た。これに同席した県文書法務課長は、

「県職員の基本的な対応として職務上知り得た秘密は漏らしてはならず、漏えいは対応する必要があった。報道に圧力をかけようとかそういう趣旨では一切ございませんが、県として秘密の漏えいを放置はしておけないという考えです」と説明した。

だが内部情報に基づいた文春報道は、元県民局長への県の対応に疑問があることを明らかにしたものである。公益通報者として守られるべきだったとの見方が強まっている元県民局長を、斎藤知事の命を受けた当時の片山安孝副知事が尋問し自供に追い込んだ事実などを報じる内容だ。

兵庫県の問題で活発な発言をしている西脇亨輔弁護士は自身のYouTubeチャンネルで、

「守秘義務はすべての県内部情報に適用されるものではありません。役所の情報は本来国民の監視の対象になるもので、その監視や討論の材料となる正当な情報流出は守秘義務違反ではないとの判例があり、これを最高裁も基本的に踏襲しています」と解説。文春への情報提供者の告発は間違っていると批判している。

兵庫県の情報漏えいに関する第三者委員会が5月13日に公開した報告書 
兵庫県の情報漏えいに関する第三者委員会が5月13日に公開した報告書 

さらに13日の会見では、漏えい情報を自身のSNSにポストした立花・丸山両氏について、県も委員会メンバーも「A氏、B氏」と呼んで決して実名を口にしなかった。

工藤委員長はその理由を、特定が容易な斎藤知事と片山元副知事を除き「固有名詞、人名はすべて伏字にしようという方針で行ないました」とだけ説明。「A氏、B氏を伏せることで何が守られるのですか?」との質問にも「方針としてそう決めた」と返しただけだった。

「記者から皮肉が詰まった『じゃあ週刊文春も“某誌”とすればいい』と言われると、委員長は『まあそうかもしれません』としか言えなくなりました。立花氏に関する否定的な発信を避ける雰囲気です」(地元紙記者)

第2の第三者委員会の報告書が一部公表され、立花氏らがポストした元県民局長の私的データは県から流出したことが公に確認された。しかし立花氏のポストへの削除要請について斎藤知事は、「法的なハードルが高い」と言い、またも消極的な姿勢を見せている。

兵庫県政を取り巻く混乱は落ち着くどころか、いっそう拡大する兆しを見せている。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班