「フライボール革命」とは別物

今のMLBは「フライボール革命」の時代だと言われる。「フライボール革命」とはバットスピードを上げて打球速度を最大化し、その打球をバレルゾーンと呼ばれる角度で打ち込んでフライを打ち上げる打法だ。安打、長打よりも得点効率が高いホームランをひたすら狙うという考え方だ。

両翼78メートルの後楽園球場に対して東京ドームの両翼は100メートル(写真/shutterstock)
両翼78メートルの後楽園球場に対して東京ドームの両翼は100メートル(写真/shutterstock)

史上最多ホームランの王貞治は「フライボール革命」の先駆者だったのか? どうやらそうではないようだ。

「フライボール革命」では、フルスイングが基本になるため、どうしても空振り、三振が多くなる。フライボール革命以後のMLBの代表的な打者であるジャンカルロ・スタントン、アーロン・ジャッジ(ともにヤンキース)、大谷翔平(ドジャース)と、当代NPBの強打者である中村剛也(西武)、村上宗隆(ヤクルト)、岡本和真(巨人)の通算本塁打数と三振数、そして1本塁打当たりの三振数(SO/HR)はこうなっている。

スタントン 429本塁打/1963三振SO/HR4.58
ジャッジ 315本塁打/1209三振SO/HR3.84
大谷翔平 225本塁打/917三振SO/HR4.08
中村剛也 478本塁打/2121三振SO/HR4.44
村上宗隆 224本塁打/913三振SO/HR4.08
岡本和真 233本塁打/763三振SO/HR3.27

6人とも1本のホームランを打つために3〜4個の三振を喫している。「三振はホームランのコスト」と言われるゆえんだ。

バットスピードが上がると多少の打ちそこないでもフェンス越えをすることがある。大谷の反対方向の一発など、まさにそれで、そのためにもとにかくフルスイングが大事だったのだ。

では、王貞治はどうだったのか?

王貞治 868本塁打/1319三振SO/HR1.52

なんと1本のホームランを打つ間に1.5個強しか三振していない。