王貞治と松井秀喜の飛距離は?

ただ、王貞治には一つのネガティブな要素がついてまわる。それは「昭和の野球場が小さかった」ということだ。両翼100m中堅122mの東京ドームが開場したのは1988年、それ以前のプロ野球では両翼90m、中堅110mがスタンダードなサイズだった。

公認野球規則2.01「競技場の設定」には、1958年6月1日以降にプロ野球球団が新設する球場は、両翼325フィート(99.058メートル)、センター400フィート(121.918メートル)以上なければならないというものがある。本来ならこの規則に則って球場を大型化すべきだったが、コストと「本塁打が減れば人気にかかわる」という理由で、NPBは1988年まで小さな球場でペナントレースを続けていたのだ。

今の球場では100m以下の飛距離のホームランは、ランニングホームラン以外はほとんどあり得ない。王のホームランの内、何割かは今の球場なら外野フライになったのではないか?

王貞治の全本塁打の飛距離は宇佐美徹也編著『ON記録の世界』(読売新聞社)という本に残されている。またNPB時代の松井秀喜の本塁打も報知新聞の手で記録されている。

東京ドーム開場以後にデビューした松井と、東京ドームができる前に引退した王貞治の本塁打の飛距離を比較してみる。

王貞治と松井秀喜の本塁打の飛距離比較(『野球の記録で話したい』より抜粋)
王貞治と松井秀喜の本塁打の飛距離比較(『野球の記録で話したい』より抜粋)

王貞治の100m未満のホームランは102本、これを差し引いても766本となる。バリー・ボンズが762本だから、辛うじて首位の座を守ったことになる。

松井秀喜の全本塁打の68.9%が120m以上だったのに対し、王は22%、パワーでは見劣りするが、王のホームランの大半は今でもフェンス越えだったはずだ。