スタンフォードが突き止めた「忙しさ」の正体

その言葉に、私はハッとしました。逆だと思っていたからです。

時間はありあまり、お金は有限だと。しかし、当たり前ではありますが、人は死にます。必ず死にます。いつか終わりが来ます。

それは誰しもに与えられた平等な条件です。だからこそ、「時間をどう使うか」についてちゃんと向き合わなければなりません。

このことに気づいた瞬間から、私は自分の時間をどのように使うかを真剣に考えるようになり、書店に行き、本を読み漁りました。

こうして発見した1つの答えがあります。

それが「忙しさとは幻想である」ということです。

先述した通り、現代人は年々、自分のために使える時間が増えています。

事実として、自由時間が増えているのです。しかし、それとは裏腹に、現代人は「忙しくなった」「時間が足りない」と感じています。

つまり、「忙しさ」とは、〝状態〟ではなく、〝心の感じ方〟なのです。

旅行中、どれだけ予定を詰め込んでも、人はそれを「忙しい」とは言いません。むしろ充実した旅だとすら思う人がほとんど。

現代人の57.2%が「1日24時間では足りない」と思っている事実…人はなぜ楽しい予定が重なると充実感をおぼえ、仕事が重なると「忙しい」と感じるのか_3
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でも、なぜか仕事だと、そうはいかない。「忙しさとは幻想である」これには、科学的エビデンスも存在します。

「なぜ人は、忙しさや焦りを感じるのか?」そんな普遍的な問いに答えを出すべく、スタンフォード大学の研究者たちは実験を行いました。

実験では、「時間制限(プレッシャー)」がある状況で被験者に課題を与え、通常時と比較し、ストレスホルモン(特にコルチゾール)の分泌がどう変化したかが調べられました。

結果、時間的なプレッシャーを感じるタスクに取り組むと、被験者のコルチゾールの分泌が増加すること(焦燥感が増加すること)が明らかとなりました。

これは、実際に行っているタスクの量自体が「忙しさ」に直結しているわけではなく、プレッシャーを感じた時に、心が勝手に「忙しさ」を作り出すことを意味しています。

やはり忙しさとは幻想だということです。

写真/Shutterstock

忙しさ幻想
豊留 菜瑞
忙しさ幻想
2025/4/11
1540円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4763142139

なんとなく過ぎてしまう毎日とさよならできる本。
忙しさとは、「状態」ではなく「心の感じ方」です。


旅行中に、分刻みで目的地を訪れるような予定を組む時、
人はそれを「忙しい」とは言いません。
むしろ、ほとんどの場合、目を輝かせながら
「なんて、充実した旅なの!」と言います。

一方、仕事となると、1日に2~3個もミーティングが入れば、
人はそれを「忙しい」と感じます。
つまり忙しさは、タスクの量と関係がなく、
単なる心の感じ方であり、幻想なのです。


タスクが多かろうが、少なかろうが、
締め切りが迫っていようが、迫ってなかろうが、
パソコンと睨めっこしていようが、ソファに寝転んでいようが、
どんな状態だろうが、“心が忙しい”と感じているなら、
人はそれを「忙しい」と言い、たくさんのことを諦めていきます。

そして、不思議なことに、暇で退屈な人ほど、
「時間がない」と言っているのです。

本書は、今話題の読書インフルエンサーが
「世界中に存在する科学データ」や
「世界中の本に教えてもらったこと」をもとに、
そんな幻想でしかない「忙しさ」から
抜け出すための方法を書いた本です。

【目次より】
第1章 暇で退屈な人ほど、「時間がない」と言っている
第2章 「時間」に振り回されないためにやめたほうがいいこと
第3章 意味のある時間を過ごす時、そこに「忙しさ」は存在できない
第4章 人生をもっと濃厚で、もっと意味のあるものにする読書術

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