怒りを溜め込みひきこもった⁉
幼いころから高田さんは口数が少なく、自分の気持ちを話さない子どもだった。
「兄貴は学校でこういうことがあったとか、親によく話してたようなんですが、俺は全然話さなかったらしいです。寡黙だし、よくも悪くも自立心があった。進路とかも全部自分で決めましたし、困ったから誰かにちょっと相談しようという感覚は一切なくて。人に頼るもんじゃないみたいな謎の概念がありました」
中学から運動部に所属。勉強も頑張り、高校は地区で一番の進学校に進んだ。高2のときには初めての彼女もできた。
「数か月で終わっちゃいましたけど(笑)。彼女は帰国子女で外国人の元カレと比較されて傷つきましたね。勉強も上には上がいるんだなと思ったし。でも、ひきこもった原因は、勉強とか恋愛じゃない気がしています。今でも原因ははっきりとはわかりませんが、大人への不信感や人間不信もあったんだと思いますね」
高田さんの所属する運動部は強豪だった。だが、顧問によるレギュラークラスの選手と、それ以外の部員の扱いが、天と地ほど違ったのだという。
「自分たちの学年は強くなかったんですよ。一生懸命やっているのに、試合に出られない選手はゴミ扱いというか、邪魔だから早く辞めろみたいな態度をされて。強豪校あるあるですけど、一応教育の場なのに、教育者がこういう差別的なことするんだと思いましたね。
反骨心で最後まで部活をやり切りましたけど、間違ったことに対する怒りっていうか、屈服させられる屈辱感みたいなものは強かったかもしれないですね」
やり場のない怒りを発散することもできず、1人で抱え込んだままひきこもることしかできなかったのだろうか。ずっと深い穴の底にいた高田さんは数年後、上方にかすかな「光」を見る――。
〈後編へつづく『救急隊員になった元ひきこもり男性の4年間…「黒歴史じゃなくて、むしろ誇りに思っている」と断言できるワケ』〉
取材・文/萩原絹代 サムネイル/PhotoACより