〝真っ黒いピカチュウ〞が世界へ

皆川 このプロジェクトについては僕も知らないことがたくさんあったので、ちょっとお二人に解説していただきながら進めていきたいと思います。まずは2018年の秋にインスタグラムの投稿が始まりました。

鹿瀬島 そうですね。このためだけにアカウントをつくったんですが、素材が何もないので、ヒロシさんにいろいろ写真を撮っていただいてポストしていました。

皆川 ポケモン本体のインスタのフォロワーはどれぐらいいるんですか?

鹿瀬島 日本だけで百数十万人。グローバルだと数百万人はいると思います。

皆川 そんなにいるのに、新しいアカウントは0人。

鹿瀬島 0人です。

皆川 誰も知らないということですよね。

鹿瀬島 そうです。しかも、僕らのチームで運用していました。

皆川 いちばん最初に気づいたのはヒロシさん本人かもしれない、ぐらいの感じですか。

鹿瀬島 そうですね。

皆川 そして、最初から公約どおりに世界に出ていったのがすごいと思ったんですけど、これはどういった流れですか?

鹿瀬島 ヒロシさんとお会いしたのが2018年の6月だったんですが、「10月にニューヨークでハイプフェスト(HYPEFEST)っていうフェスがあるんだけど、ここに出す?」とすごくフランクに聞かれて、じゃあ、ここを目指しましょうかみたいな、そんなノリで。

藤原 タイミングがよかった。

皆川 タイミングをすごく重視されますよね、いつも。流れが単によかっただけですか? 

藤原 はい、本当にそれだけだと思います。ただ、最初から海外をとりたいという話だったので、ここだったら勝負できるかなと。

皆川 反響はどうだったんですか。

鹿瀬島 手前みそですけど、出ているブースの中ではいちばん人が多かったんじゃないかって、その場にいらっしゃった人たちには言っていただきました。物は売っていなくて、皆さんただ見に来ているだけなんですけど。

皆川 トラヴィス・スコット※も来たらしいですね。

トラヴィス・スコット氏 写真/Shutterstock
トラヴィス・スコット氏 写真/Shutterstock
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藤原 ふらっと来たんです。

鹿瀬島 そう、ふらっと。僕らが誰もいなくて、現地のスタッフだけのときに来て、「このぬいぐるみが欲しい」と言って断られたらしいんです。その後にヒロシさんに連絡がいったようで、「トラヴィスが黒いピカチュウを欲しがっているよ」と僕に連絡がきました。

皆川 2017年の時点では、ファッションの人は誰もポケモンに見向きもしなかったのに。

鹿瀬島 そうですね。僕らも想像していなかったです。

藤原 ちなみに僕もその頃、トラヴィスのことは知らなかったんです。

皆川 何と。

藤原 あっ、カツアゲされるのかと思ったら、お辞儀をされて、〝I am Travis.〞って。突然そう言われても誰かわからなかったんだけど、隣にいた人に「知らないんですか?トラヴィス・スコットですよ」って。ピカチュウの話もちょっとして、じゃあという感じで。

※トラヴィス・スコット 
ラッパー・プロデューサー・ソングライター・デザイナー・ファッション・アイコン 藤原と同じく数多くのブランドとのコラボレーションを手がける

FRAGMENT UNIVERSITY 藤原ヒロシの特殊講義
非言語マーケティング
藤原 ヒロシ
FRAGMENT UNIVERSITY 藤原ヒロシの特殊講義 非言語マーケティング
2025年2月26日発売
2,200円(税込)
四六判/344ページ
ISBN: 978-4-08-790194-8

ナイキ、ポケモン、スターバックス……世界の大企業は、なぜ藤原ヒロシを求めるのか?

90年代に「裏原宿」という世界でも類を見ないカルチャーを築き、その後はファッションの枠を超えて支持され、原宿のゴッドファーザーとして世の中に多大な影響を与えてきた藤原ヒロシ。氏の存在によって“ストリート”という曖昧な言葉に意味が定義付けられ、“コラボレーション”や“別注”など、それまでになかった言葉が世の中に浸透した。しかし、氏の作り上げたヒットやムーブメントの数々は認知されていても、その裏側にある知性、アイデアの作り方や育て方、人脈や、コミュニケーションのスタイルについては語られていない。
本書は、藤原ヒロシの仕事には本人も意図しない“マーケティング”が介在しているのではないか、という仮説のもと、歩んできた歴史や数々の仕事の事例を抽出し、それらを学術的に言語化して講義を行った架空の大学プロジェクト「藤原ヒロシの特殊講義 非言語マーケティング」の内容をもとに、一冊の講義録としてまとめたものである。

DAY1 文化人類学 -遊学史-
DAY2 社会学 -メディア論-
DAY3 情報学 -交友研究-
DAY4 経営学 -コラボレーション理論-
DAY5 建築学 -空間デザイン論-
DAY6 ケーススタディ -スターバックス コーヒー ジャパン-
DAY7 ケーススタディ -ナイキ-
DAY8 最終講義

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