藤原ヒロシ(以下藤原) デザイン集団「フラグメント fragment design」主宰。世界中の企業とのコラボレーションを手がけている
皆川壮一郎(以下皆川) クリエイティブディレクター。株式会社みんな代表(2023年時点では博報堂ケトル所属)
鹿瀬島英介(以下鹿瀬島) 株式会社ポケモン執行役員
ポケモンに無関心だったファッション業界
皆川 ではここからはゲストを一人お招きしたいと思います。株式会社ポケモンの鹿瀬島英介さんです。
鹿瀬島 よろしくお願いします。
皆川 結構長いんですよね、この「THUNDERBOLT PROJECT BY FRGMT & POKÉMON」のプロジェクトは。
鹿瀬島 2018年から今年(2023年)で5年ほど続いているので、長いですね。
皆川 すべての始まりは「ポケモンGO」だったわけですよね。「ポケモンGO」を知らない人はこの中にはいないと思いますが、これでポケモンの認知が広がった、ターゲットが広がった。数字的にはどれぐらいですか?
鹿瀬島 10億ダウンロードを超えているような状況です。ちょっと正確な数字は言えないんですが。
皆川 ヒロシさん、「ポケモンGO」は?
藤原 僕はポケモン世代じゃないのでやっていなかったんですけど、周りがみんなやっていたので、どんなものかと思って始めてみました。
皆川 鹿瀬島さんはその頃、次は何を仕掛けようかと考えていて、出した戦略がファッションだったということですよね。
鹿瀬島 そうですね。「ポケモンGO」によって初めてポケモンに触れたという人がかなり多くいらっしゃったと思うんですよ。なので、僕らの感覚としてはポケモンファンが多様化したし、さらに多層化した。
「ポケモンGO」って50代、60代の方もプレーされていたので、一気にタッチポイントが広がったという実感はありました。そして次の一手として、いろいろなファッションブランドの方々にお会いして、「何かやりませんか」という話をしていました。
皆川 感触はどうだったんですか。
鹿瀬島 ポケモンって子ども向けだよね、ということは結構言われましたし、話は聞いてくださるんですけど、「じゃあ、何をやるの?」っていうところがイメージできなかったみたいで。話は聞いてくれるけれども、そこから先に進まない、そんな感じでした。
皆川 ポケモンとファッションで何をやるの?という感じですか。
鹿瀬島 そうですね。
皆川 鹿瀬島さんは(藤原)ヒロシさんのことよくご存じだったんですか?
鹿瀬島 そうですね。10代、20代でファッションにのめり込んで、いろいろな雑誌でヒロシさんのことを目にしていたし、さっきグッドイナフの話が出ましたけど、自分もものすごく影響を受けていた人間なので、ファッションをやるなら誰だろうと考えたときに、実は真っ先に浮かんでいたのはヒロシさんでした(笑)。
皆川 で、意を決してオファーしたと。
藤原 僕はポケモン世代じゃないので、ほとんど知らなかったんです。最初は宝島社の知り合い経由できた話でしたよね。
鹿瀬島 そうです。
藤原 宝島社の知り合いが「興味ありますか?」と聞いてきて、友達とうーんと考えているうちに、ポケモンのしっぽにフラグメントの稲妻マークをそのままつけたらいけるんじゃない? という話になって。英語だとあれはサンダーボルト、何でしたっけ。ピカチュウのことをそういう…。
鹿瀬島 そうですね。しっぽがサンダーの形で、英語名で〝Thunderbolt〞というポケモンの技もあったりするので、そういう連想だと思います。
藤原 「そういう親和性もあるし、できるんじゃないの?」と言われて、手描きしてみて、これならいけるかもね、となりました。