話題になりがちな「ロックTシャツ」の高騰が進行中

最近ネットで〈アラフォー女子が着るとイタいのはロックTシャツ〉という数年前の女性向けweb記事がまた出回り(当該記事は内容変更済み)、世のロックT愛好家から〈好きなものを着てなにが悪い〉と総攻撃にあっていた。

1990年代にはロックに興味がないストリート系ファッションの女子がこぞってアイアン・メイデンのTシャツを着ていたように、ロックTシャツはもはやロックファンにとどまらぬファッションアイテムのひとつになっていた。

そんなロックTシャツのヴィンテージものが今、高騰しているらしい。モノによっては3000円~5000円だったものが、20~30万円の値段で取引されているそうだ。アナログレコードに続き、ロックTシャツも投資の対象になったのだろうか。

そこで、人気になった背景をロックTシャツに詳しい、大阪でヴィンテージTシャツの専門ショップ「greatLAnd」を営む岩谷幸舗さんに聞いた。岩谷さんは海外までヴィンテージTシャツの買い付けに行くなど、TV番組でも紹介されたことのある、ロックTの目利き人である。

※ちなみに彼が営む「greatLAnd OSAKA」で取り扱うアイテムは、中古をメインで取り扱うので一点物が多い。現在(6月21日)の最高値は90年代のグランジバンド、ダイナソーJrのTシャツで32万9890円だ!

アルバム『Whatever's Cool with Me』のジャケットがあしらわれた「FRUIT OF THE LOOM」のTシャツ 写真:greatLAnd
アルバム『Whatever's Cool with Me』のジャケットがあしらわれた「FRUIT OF THE LOOM」のTシャツ 写真:greatLAnd
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「価格が上がってきたのは6〜7年前からです。ジャスティン・ビーバーやカニエ・ウエストなどの海外セレブがバンドTシャツを着始めた影響が大きいと思います。

それまでも1990年代のものは人気でしたが、それは『このバンド好きなんだよね』っていう人たちのあいだで盛り上がっていた、カルチャー色の強かったもの。それが、ファッションとして消化され出したんです。

背景には、バレンシアがコレクションで1990年代をサンプリングしたり、ボロボロのTシャツに何千万円もするジュエリーや時計を合わせたりするヒップホップのファッションがトレンドになったというのもあると思うんですが、1990年代にTシャツを買っていた人たちとは明らかに違う層が流入してきたんですよね。

で、そういうセレブの人たちの写真がSNSとかに出ると、それを見た人が「ほしい」となる。ただし、古いものなので当然、絶対数が決まってるわけですね。なので当たり前ですが、ヴィンテージTシャツって、これ以上増えないんです。

岩谷幸舗さん
岩谷幸舗さん

スニーカーだと着用したら中古品は値が下がりますけど、Tシャツとかデニムは使用感があっても値が下がりづらい。それで、我も我もと参入してきたから今のような状態になったんじゃないでしょうか。昔はロックTシャツって、ライブに行ったときに買って、古くなったらパジャマにしたり捨てたりしてたんですけどね(笑)。