「働けないならやめてほしい」

声掛けのうまいスタッフを真似てみたところ、店舗のリーダーから褒められることもあったが、結局それから業務終了までの6時間、ほぼ同じ場所に立ちっぱなし。「退勤するころには過呼吸気味で、半泣きになってしまっていた」という。

その帰り道、遠藤さんは気づくと転職サイトに登録していた。

「立ち仕事自体は経験していましたが、動けない場所での立ちっぱなしがここまで辛いとは思いませんでした。それからも数日は出勤していたのですが、お客さんからの視線や、新人に対する店舗スタッフのぞんざいな扱い、突然のワンオペ業務など、さまざまな要因でストレスがたまり、人に声をかけられただけで半泣きになるほどでした。

実は私は抑うつ症状が出てしまう体質で、その悪い波と仕事でのストレスが重なってしまった結果、4月中には休職を申し出ました。そのとき、上司から『こんなことあまり起きたことがないよ』と言われたのもショックでしたね」

はじめての社会人経験でズタボロに(画像はイメージです/Shutterstock)
はじめての社会人経験でズタボロに(画像はイメージです/Shutterstock)

休職はしたものの、この状態がいつ回復するのか、店舗に戻ったときどう反応されるのかという心配は尽きなかった。今までの感覚から、半年くらいは戻れないだろうという予測もあった。

そして5月、結局遠藤さんはそのまま退職を決意した。この症状は100%回復できるものではないこと、再発と寛解を繰り返すこと、そのペースが一定ではなく予測がしづらいことを会社に伝えると、会社側は「働けないならやめてほしい」という対応だったそうだ。

遠藤さんは自身の体質について、正直に話せば“不利になるかもしれない”と思い、入社前に会社には伝えていなかったという。

実際、病気や既往歴については、業務に差支えがなければ入社前に伝える必要はなく、会社もまた、強制的に聞いてはいけないとされている。特に、うつ病など精神疾患について、会社側が聞くことは難しい。だが一方で、就活生が持病について意図的に申告をせず、それが業務に大きな支障をきたすと判断されれば、少し話は変わってきてしまう。

遠藤さんは自身の体質について、業務や環境に少しずつ慣れていけば仕事に問題はないと思っていたが、そこが今回のケースの大きな落とし穴だったようだ。

もしあらかじめ会社に報告していれば、最初はもっと心理的な負担が少ない現場からのスタートだったかもしれない。会社としても、遠藤さんが働きやすい環境を整えることができたかもしれない。

だが、持病などを伝えれば内定率は下がる傾向にあるという。こうした慣例がある限り、就活の現場で就活生が堂々と自身のことを打ち明けるのは難しいのだろう。