なんでもかんでもハラスメント認定の世の中
私と同じように、とにかく若者とコミュニケーションをとるのをビビっている、そんな昭和世代はきっと多いはず。
でも、同時にきっとどこかで感じていると思うんですよ。「このままじゃあ、ダメなんだろうな」って。
わかりあえる同世代の仲間だけで集まり、いつもと同じ場所で、同じ酒を飲みながら、同じような会話を繰り返す。
それはとてもラクだし心地良い。
でも、どんどんコミュニケーション能力が衰えていく気もするんですよね。
相手を“探る”努力をしないから。
人を知るにはやっぱり、会って、話して、接する必要があって。
そこで、何が響いて、何が返ってくるのか、そんな確認を繰り返しながらお互いのことを理解していくんだよね。
相手の目つきや表情を見て「こういうことを言ったらダメなんだ」「これをするのはイヤなんだ」なんて学びながら。
人と触れ合うと、イラッとすることも、ムカつくことも、嬉しいことも悲しいこともあるけれど、それもまた勉強です。
感情をあっちこっちに動かし、正解を探しながら、私たちは人間関係を築いていくわけです。
なのに、今ではお互いに不快なことはなんでもかんでもハラスメント認定。
異なる世代とは交わることを避けて平行線のまま。深まるばかりの分断を放置している、私たちはちょっとラクをしすぎているのかもしれないよね。
今の私の現場マネージャーちゃんは22歳の女の子なんですけど。
こないだ、私と同世代のスタイリストさんが、彼女に初めて会った瞬間、いきなり聞いたんですよ。「彼氏いるの?」って(笑)。
それは、若さにビビる私がずっと聞けなかったこと。
それだけに、一瞬ドキッとしたんだけど、そこからは恋愛トークがスタート。
雰囲気が悪くなるどころか、逆に楽しい空気が流れたんだよね。
そんな出来事からも感じたんだけど、今の時代、こういう“空気を読みすぎない人”が必要な気がするんですよ。
例えば、裏でも表でも誰に対しても「久々〜!」「元気?」「マジウケる〜!」とタメ語で話せる、ギャル芸人のぱーてぃーちゃんの信子ちゃんとか。
昭和のおばちゃんテンションでガンガン距離を縮めちゃう、いとうあさこさんとか。
そう考えると、ギャルと昭和のおばちゃんって最強なのかも。
お互いにビビりあっているからこそ、その壁をぶっ壊してくれるフランクな人間がいると、現場の空気がぐんと和んだりするんだよね。
振り返ると、私自身も先輩からのフランクな言動に救われたことが何度もあります。
なかでも「いつか私もあんな先輩になりたい」と憧れたのが関根勤さん。
関根さんてね、世代や立場に関係なく現場にいる全員に声をかけてくれるんですよ。
しかも、それはたいてい「大久保ちゃん、あれ見たよ!」「あの番組、面白かったね!」なんて嬉しい褒め言葉で。
若手時代は関根さんの言葉にいつも緊張が和らいで、今日の収録は楽しめそうという気持ちになれたんだよね。
だからこそ、私もいつか、関根さんのようになりたい。若者にビビったりすることなく、褒め言葉を届けられるような大人になりたい……。
えっ、今は褒めるのもハラスメントになる可能性があるの? 嘘でしょ? なんで?
みんな、考えすぎだよ‼︎ 褒めるくらいは許してくれよ〜‼︎(涙)
聞き手・構成/石井美輪 イラスト/中村桃子 撮影/露木聡子