無駄になった家賃1カ月分の更新料
2月半ば、男性は、地元の不動産業者を回って近隣で新居を探し始めた。
「昨今、家賃の値上がりが言われていますが、本当に値上がりしていました。引っ越しをあきらめる人が多く、物件が出てこなくなったとも聞きました。結局、新居が見つかるまで1カ月近くかかり、何だかんだと100万円近くの出費になってしまいました」(男性)
男性はマンション売却の経緯にも納得できなかった。7階建てマンションは、もともと地元の信用金庫が所有していた土地に、1980年に信用金庫の子会社が建てて、45年近く所有していた。
昨年11月末、その子会社が、上場している某大手不動産会社に売却し、さらに、現在の所有者A社に転売された。
男性は、信用金庫の子会社が売却する直前の昨年10月、新たに2年間の契約更新を行なっていた。
「マンション管理会社の担当者は、長年にわたりよくしてくれましたが、契約更新の際にマンションが売却されることは教えてくれませんでした。こうなることが分かっていれば契約は更新しませんでした。家賃1カ月分の更新料が無駄になったのです」
(信用金庫に売却の経緯等を聞いたが「お答えは差し控えさせていただきます」と回答)
それ以上の問題は“転売”だ。
昨年11月29日、信用金庫の子会社からマンションを購入したのは、大手不動産会社の傘下で、中古物件を購入してリニューアルし、投資用物件として販売しているグループ会社だった。
しかし、このマンションはリニューアルされることなく、わずか1カ月半後の今年1月17日にA社に転売されていたのだ。ちなみにこの大手不動産会社は、人気タレントを起用したユニークなテレビCMで知られている。
男性は新居探しで地元の不動産業者を回ったとき、こう指摘されたという。
「中国人が高く買ってくれるので、1棟ごとさっさと転売してしまうことはよくあります。または、地元の信用金庫が実態不明のA社に売却するとは考えられず、大手不動産会社がA社に転売することを前提に、信用金庫から買い取った可能性がある」
(大手不動産会社に転売の経緯等を聞いたが「個別の取引についてはお答えいたしかねます」と回答)