目標の「ちょっといい感じのおじさん」には「なれている」
――奥さんの「もし私と別れることになってもいい、誰かに本気で愛されたという証をあなたに残してあげたい」っていうフレーズ、何回も出てますよね。まるでやがて来る未来での別れをほのめかしているみたいですが……。
別れをほのめかすというよりも、それぐらいの覚悟で私は結婚したという、妻らしい決意表明だと思います。自分なんかのためにそこまで言ってくれる妻に感謝しかないです。でも、彼女も彼女なりにいろいろ考えているんでしょうね。自分の存在が果たして作家としての俺にプラスなのかマイナスなのか、それは結婚した今も分からないって言っていたので。
私が「すごく幸せだ」って言い続けていても、自分といることが私にとってマイナスだと思う気持ちが上回ってしまったら、妻のほうから去っていくことがあるかもしれないとは思っています。
――じゃあ、奥さんは深層心理で別れがくる可能性もなくはない、と思っている?
どうなんでしょう。もしそう思っているのだとしたら私の責任ですね。妻が言うとおり、私が将来ひとりになったとしても、「自分は過去にこんなに誰かに愛されたことがあるんだぜ」と、胸を張って生きていけるだけの愛情は毎日もらっているのは確かです。寝る前の化粧水やシートマスクも続けるでしょうしね。もちろんたまには大喧嘩もしますけど、妻と別れる未来は私の中では考えていないですね。
彼女の期待に応えるだけの自分をまだ見せられていませんしね。一緒にいて楽しいし……二人の関係が今より悪くなることはないと思いますし……良くもならないかもだけど(笑)。
――もともとこの本は近所の子供たちに「太っちょゴブリン」と言われたところから、爪さんが変わろうとしてきた軌跡が書かれています。現在、目標だった「ちょっといい感じのおじさん」になれていると思いますか?
昔だったら「まだなれていない」って謙遜してたと思うんですけど、「なれている」と思いますね。その自信はあります。だからといって過去の太っていた頃の自分を否定はしませんけどね。
あれはあれで楽しかったし、過去の私があるからこそ今の私と今の幸せがあるので。
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取材・文/土佐有明 撮影/齊藤晴香
※「よみタイ」2025年3月27日配信記事