3,4歳から始めるのがよい
体力、体型が同じであったら、基本的な運動センスが豊富な人のほうが伸びてくると、私は思っている。そのために子どものうちに、身体を使ったいろいろな遊びをやらせてほしい。
遊び程度でよく、本格的にやらなくていい。感覚を覚えるための練習と考えてほしい。
またこれらの感覚づくりは、トレーニングではないので疲労感を伴わない。むしろ遊び感覚で行なうほうがよいと思われる。
感覚づくりは、専門種目を始める前に行なうことが望ましい。となると3、4歳くらいから始め、中学校に入学するまで、10年間の長きにわたり行なうことになる。
どうして私がその年代にこだわるかというと、私自身、子どものころにそのような感覚が備わっていなかったからである。
ハンマー投げの選手となってから、大きなスランプに遭遇したのもそのためであろう。もちろん、ハンマー投げという競技が、技術の難しい種目であったことも事実である。
私は大きなスランプに遭遇したときも、ハンマー投げの技術の研究と実践を繰り返すことで、乗り越えてきた。その経験により、私は「ハンマーを遠くに飛ばす感覚」を獲得したのである。そしてその豊富な感覚が、息子や娘、多くの学生選手の指導に役立った。
さらに、専門以外の知識も必要だと思う。専門家は自分の専門だけ知っていればいいわけではなくて、世の中のいろいろなことを知る中で応用が利いてくる。
私も物理学という学問は専門外であるが、自分のやってきた投擲を見直すときに、物理の本を読んでマクロたる法則を見つけることができた。
現在も私はハンマー投げの指導をしているが、教えることの難しさは感じている。それは、選手に「ハンマーを遠くに飛ばすための感覚」が備わっていないことにある。
そのため、感覚養成のドリルを考案して行なわせるが、それでもできないことが多い。そこでさらに、新たなドリルを考える。しかしそれもうまくいく確率は低い。選手たちにもそれぞれ個性があるため、問題点もそれぞれ異なる。
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