〈ルポ大阪万博〉「今の時代に万博をやる意義はあるのかな」疑問を抱えた建築家が熟考の末、「大屋根リング」をデザインした思惑
大阪・関西万博2025が4月からいよいよ始まる。その実態は会場建設費が2度も上ぶれし、パビリオンの建設が遅れるなど、問題が噴出し続けた。なかでも今回の万博のシンボルともいえる「大屋根リング」の建設は大きな波紋を呼んだが、実際に会場デザインを引き受けた建築家はその意義についてどう考えているのか。
『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』より一部抜粋・再構成してお届けする。
ルポ 大阪 関西万博の深層#3
どこにお金をかけるかが大事
「(鉄骨の値段を)超えるならやっぱり、説明ができないなと。たしかに金額だけを見ると結構あるが、あの規模の建築で坪単価が約130万円は、専門家からすると安いと思っている。あの大きさや性能で344億円。いまの物価上昇の中でゼネコンさんが工夫をしてくれて、額を抑えてくれた」
1970年大阪万博の際に岡本太郎がデザインした「太陽の塔」は総工費6 億3千万円だった
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「何の印象も残らない万博にならないよう、どこにお金をかけるかが大事だ。(会場建設の)ほかのところへの予算配分を少しずつ抑え、リングにどのぐらいお金をかけるか考えた。リングは日よけの屋根でもあるが、上にのぼれるし、ランドマークにもなる。
『大阪の万博と言えばこれだ』とわかりやすく伝わる。単に機能的な建物というだけでなく、どれだけ世界に伝わるかも含めた額としては、決して高くないと思っている」
藤本は大屋根リングの上で盆踊り大会などを開き、「世界のつながりを体感できる特別な場所になれば」と考えている。
写真/shutterstock
『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新聞出版)
朝日新聞取材班
2025年2月13日
924円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4022953001
大阪・関西万博が2025年4月、ついに開幕する。各国パビリオンでの展示のほか、有名歌手のコンサート、大相撲、花火大会などさまざまな催しがあり、お祭りムードが醸成されるだろう。
しかし、本当にそれでいいのだろうか。会場予定地での爆発騒ぎや、建設費の2度の上ぶれ、パビリオン建設の遅れなど、問題が噴出し続けた。
巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われるべきだ。朝日新聞取材班が万博の深層に迫った渾身のルポ。
◆目次◆
第1章 維新混迷
第2章 膨らみ続けた経費
第3章 海外パビリオン騒動
第4章 夢洲が招いた危機
第5章 万博への直言