あらゆる国が物価が安いだけの観光国になってほしいなんて思っていない
山崎 確かに、島国のイギリスはナポレオンの時代も含めてずっと、ヨーロッパ大陸の情勢とは少し距離を置いて、大陸でどこかの国が強くなるとそれを牽制する側に加勢するという姿勢をとり続けていました。
ナポレオンが勃興すると、プロイセンやロシアなどの反対勢力に与し、ロシア帝国が極東と中央アジアへの進出を始めると、その牽制として日本と日英同盟を結び、ナチス・ドイツが台頭すると、フランスやソ連と共にそれと戦ってきたのがイギリスです。世界のバランサーとして力の均衡を保とうとする。
今は東アジアで中国の影響力が政治・経済・軍事のすべてにおいて強まっていますが、日本の国力が衰退すれば、そこで大きくバランスが崩れてしまう。
内田 日本が好きだとか嫌いだとか、そういう単純な話ではないんです。欧米でもアジアでも、多くの国はそれぞれの長期的な国益を配慮した場合に、日本ができるだけ「まともな国」であることを願っている。
物価が安いだけの観光国になってほしいなんて思っている国はありません。でも、そのような国際的な期待にどう応えるかという問題意識を日本人は感じているようには見えない。