過去に例のないいかがわしさが露呈した都知事選2024

山崎 2024年の東京都知事選も非常に象徴的だった気がします。

結論から言えば現職の小池百合子が3選を果たしましたが、今回ほど荒れた都知事選もないでしょう。

過去最多となる56人の立候補、卑猥なポスターや候補者ではない人物のポスターが掲示されたり、政見放送で服を脱いだり奇声を発したりする候補者が現れるなど、日本の首都の知事を選ぶ選挙にふさわしくない低次元な騒動が次々と発生しました。

しかし、私が深刻だと思ったのは、現職の小池百合子に関する複数の不正疑惑を、大手メディアが投票日までまったく報じずにいた態度でした。

「2024年の都知事選は過去最高の下品さでしたね」2年間で48億円という巨額発注も情報公開なし、三井不動産グループへの都幹部の天下り疑惑も報道なしの不思議 _1
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たとえば、東京都庁に映像を投影する「プロジェクション・マッピング」と呼ばれる事業について。

小池都政は大手広告代理店「電通」の子会社に発注しましたが、2年間で総事業費が48億円という巨額の発注であるにもかかわらず、東京都は契約に関する情報の公開を拒み、入札の審議はたった10分、事業申請者と承認者と入札責任者が同一人物(東京都産業労働局の観光部長)、どのように入札を決めたのかを記録した議事録も作られていないという、不正を疑われても仕方のない、不透明きわまりない案件でした。

また、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、都知事選の告示日直前の2024年6月16日、東京都にある五輪選手村や神宮外苑再開発などの大型再開発を主導する三井不動産グループ2社に、都局長ら幹部14人(うち8人が再開発事業を所管する都市整備局の元幹部)が天下りしていた事実を報じました。

同記事によれば、五輪選手村用地は、三井不動産レジデンシャルを代表企業とする大手不動産11社に都が近隣地価の9割引きで売却したとして住民らが損害賠償を求めて提訴しており、これも不正が疑われる案件です。

にもかかわらず、大手企業の広告・コマーシャルの収入に依存する大手メディアはこれらの不正疑惑を報じない態度を貫き、とくに三井不動産のCMをたくさん流す民放テレビ各局は選挙期間中ほとんど都知事選の話題を番組で扱いませんでした。

もし都民がこれらの不正疑惑について、投票前に情報を得ていたなら、都知事選の結果は変わっていたかもしれません。

内田 昔から選挙広報というのは相当にいかがわしいものではありました。明らかに精神を病んでいる人が選挙公報に登場して、政見放送もしていた。でも、それは「民主主義のコスト」として引き受けるべきで、立候補のハードルを高く設定すべきではないと僕は思っていました。

でも、今回の都知事選はたまたま都内に借りている部屋の郵便物として配布されていたので目にしたのですが、過去最高の下品さでしたね。ここまで国民が非常識になったのか、いささか暗澹たる気持ちになりました。

政治において重要なのはたいていの場合「原理の問題」ではなく「程度の問題」なんですけれども、その「程度の問題」として常軌を逸していました。公選法というのは「性善説」に基づいて制度設計されている制度なんですけれど、その弱点を狙い撃ちしたような選挙活動でした。