バンド時代に培った数字を読む力が活かされた
バンド時代に培った「数字を見る力」をフルに使い、いつまでに何をどれだけどうするか、の目標を具体的に立てて行動に移した。「2年以内にメジャーデビューをする」という計画を立てて遂行したバンドマン時代の経験がセカンドキャリアで存分に活かされたのだ。
「正直、現役バンドマンの頃はファンの子たちがずっとついてくると思ってました(笑)。でも『一生ついていきます!』って子たちが、バンドが解散した直後から徐々に散っていくんです。転職してからもライブ活動をしていましたが、ライブをするたびに来てくれるファンの子の数が減っていく。焦りや不安がすごかったし『悔しい』って気持ちもあったけど、もともと裏切ったのは僕の方だし、やっぱり動いているものに価値があるんだと、あらためて思い知らされました」
そんなヒィロさん「僕は美容で成功しないと死んでしまうと思って生きてきたけど、美容も飽きたらやめます」と話す。
「今は美容が大好きだからやめる予定は全然ないですけど(笑)。でも、もしエステを辞めて他のことをやっても、必ず成功させます。それはやっぱりバンドでガムシャラに頑張って、自分なりに納得する結果を残せたことが自信につながっているからだと思う」
今後の展望を聞いてみると、「規模感を大きくしすぎないこと」なんだとか。
「実力以上に規模感が大きくなってしまったこともバンドが壊れてしまった原因の一つなので、自分の実力以上のことはやらない。僕が責任をもってやれる範囲でやる。これもバンドの経験
があって学んだことです」
ν[NEU]のメンバーとは五年前に再会を果たし、美容業と並行して活動をおこない、2025年1月4日の渋谷公会堂でラストワンマンライブを行い、完全完結した。
ヒィロさんは「16歳からはじめたベーシスト人生の最後の一音を、自分の大好きなバンドの大切な楽曲で終えることが出来て良かった。その音を上書きをしたくないからもう二度とベースを弾くことはない」という。
「10年前のように渋谷公会堂をもう一度完売させたかったのですが、バンドで疲弊をしてメンバー同士の仲が悪くなってしまうのが怖くて、途中でスケジュールを増やすのを諦めました。でも、やれることは全てやりつくしました。ライブが終わって1ヶ月後に集まったときに『これで完売していたらν[NEU]は解散していなかっただろうし、もっと売れていたよね(笑)』と、メンバー同士で笑いあえたのが良かったです」
ヒィロさんは「もうバンドマン人生に悔いはない。」と一切の音楽活動を休止。今後はさらに「自分自身がワクワクすることを探して、行動していきたい」と意欲的だ。
「バンドでメジャーデビュー、美容家、実業家という部分だけ聞くと聞こえはいいですが、僕はもともと太っていていじめられていたり、引きこもりで不登校だったり、32歳で一度無職になったり…と幼いころから不安が常につきまとっていて、今でもずっと不安です。でも、こういう経験を発信することにより、自分の生き方が誰かの救いや力になれたならば、僕が生まれてきた意味があるのでは…と40代の今は考えています」
今後のヒィロさんの活躍に期待するばかりだ。
取材・文/吉沢さりぃ 撮影/村上庄吾