「評価に左右されてはいけない」

『スケバン刑事』と並んで、大きな経験になったと振り返る作品がある。それは1987年に上演されたミュージカル『レ・ミゼラブル』だ。

斉藤は、ポスタービジュアルにもなった、この作品を象徴するコゼット役を務めた。

「コゼットという役は、はっきり言うとあんまり面白みのない役なんですね(笑)。いわゆる“ボーイ・ミーツ・ガール”といった感じで、ピュアでかわいくて、初恋の彼に一目惚れして結ばれるみたいな…箱入り娘のような女の子なんです。

一方で、(コゼットと対になる裏ヒロインで)エポニーヌという役があって。泥棒一家の娘で、自分も意に染まない泥棒の手先となる。好きになった男の人はコゼットを好きになって、自分になんか一切振り向いてくれない。

でも、その彼のためにフランス革命の犠牲となって散っていく…という役なわけですよ。

私はコゼット役を必死に頑張りましたけど、役柄として、どんなに頑張っても、あがいても劇評や評価には結びつかなかった。

そのときに学んだのは、評価に左右されてはいけないっていうことでした」

『週刊明星』昭和62年11月12日号より 撮影/ 青柳宏伸
『週刊明星』昭和62年11月12日号より 撮影/ 青柳宏伸
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今年9月から上演されるミュージカル『Once』に出演するなど、デビュー以来、演技でのキャリアは着実に重ねている。今、演技での表現の楽しさ、難しさをどのように感じているのだろうか。

「キャリアを積むということは、自分の中に経験の引き出しが増えるということだと思うんです。

40年もやっていればさまざまな引き出しができるので、その引き出しに“適切な”という意味での“適当”なものがあるだろう…と自分でわかる。

でも、それはたぶんよくないことだという気がするんです。

なので、自分の中に引き出しはありながらも、そこに頼らずに、そのときに感じることをちゃんと掘り下げて拾い上げるということをしなければいけない。年齢を重ねるごとにそう思います」