本人のWikipediaにも載ってない、斉藤由貴が初めて演技をした作品
「初めて演技をしたのは、緒方拳さんが主演の『原島弁護士の愛と悲しみ』(1985年)というドラマだったんですけど、本当に最初から『すごく自分のいるべき場所にいる』感じがありました。
だから、演じることについては、慣れなきゃとか、私に合っているだろうかとか、迷うことはほとんどなかったですね」
これは「“演技の仕事は自分に合っている”と最初に感じた作品は?」と質問したときの回答だ。
斉藤は、NHK連続テレビ小説『はね駒』、『はいすくーる落書』(1989年・TBS系)、『同窓会』(1993年・日本テレビ系)、2000年代も宮藤官九郎が脚本を手掛けた『吾輩は主婦である』(2006年・TBS系)などさまざまな作品で存在感を示してきたが、この答えには納得だろう。
それでも、唯一「違和感があった」と振り返る作品がある。それは、彼女の出世作ともいえるドラマ『スケバン刑事』だ。
1985年4月からスタートした連続ドラマ初主演となる本作は、武器である重合金製のヨーヨーを手に「今じゃマッポの手先」「てめぇら、許せねぇ!」といった荒々しいセリフを口にする斉藤の演技が話題を集め、大ブームとなった。
「もういろんなところで言っていることですけど、とても苦手でした…(笑)。学生時代は教室の隅っこにいて、休み時間は本を読んでいるような人だったので、この作品に飛び込めるような要素は私の中にまったくなかったんですよね。
だから、当初は『私にはちょっと難しいと思います』とマネージャーさんにも言ったり。撮影の最中も、それこそずっと違和感を抱えていました」
その迷いを払拭するべく、当時の斉藤が考え抜いた結論は、「真剣に、本気でちゃんとセリフを言う」ことだった。
「演じるうえで、“こんなふうにやればいいんじゃないか”っていうような落としどころを見つけて演技するのが好きじゃなくて、自分の中でちゃんと考えて、納得したうえで、答えを見つけたいんです。そうしないと、表面的になっちゃうので。
『スケバン刑事』に関して言うなら、“何の因果か、マッポの手先”といった決めゼリフは、とても自分が言うような言葉遣いではないけど、その役柄が本当に怒って、正義のためにと思ってあのセリフを発すると考えて一生懸命演じました」
違和感がありながらも挑んだ『スケバン刑事』は、その後、仕事に取り組むうえで大きな財産の1つになったと振り返る。
「『スケバン刑事』は、難しいな、私には似合わないなって思いながらも、そうした私の想いとは関係なく大ヒットして、認知されたっていう事実があるわけですね。
自分が満足して『これは私の代表作』って思うことと、社会的に認められたり、成功するのは、全く別物だっていうことを経験したのはすごく大きかったです。
そして、苦手だなと思いながらも誠実に頑張ることによって、その先にある自分が本当にやりたいことに近づけてくれるっていうことも学びました」