男性差別を主張することで起こる問題点
それでも昨今は、男女の差が少しでも明らかになると、SNS上で注目を集め、炎上にまで至ってしまうケースがある。
高橋氏は「ひとつひとつのケースを鑑みる必要はありますが、男性差別を主張していくことは、“物理的・経済的困難”や“精神的な生きづらさ”を可視化し、問題解決への入口を作るためには必要不可欠であると思います」と話す。一方で、主張しすぎることで生まれてしまう問題点も指摘する。
「男性差別の根源を掘り下げていくと、恋愛・結婚市場における男女の構造的格差であったり、その格差を前提としたさまざまなビジネスや人間関係における待遇や資源(賃金)分配の歪みや偏りにたどり着くことは必然であるでしょう。
性差に基づく差別は、このような格差を解消しつつ、歪みや偏りを是正する必要があると思いますが、現段階では性差に依存しない社会制度のオルタナティブがほとんど存在しません。
この状況で男性差別の過度な主張は、男女間の分断を伴う社会的混乱を生み出す可能性が高いと思います。例えば、欧米で問題化しつつあるミグダウ(MGTOW:Men Going Their Own Way〈男は好きに生きていく〉の略)やインセル(Incel:Involuntary celibate〈自発的禁欲〉の略)を自称する人たちによる女性への加害はその兆候かもしれません。
もちろん、男性差別の過度な主張だけでなく、女性差別の過度な主張からも同じような問題が生じることは言うまでもありません」
ジェンダーについての投稿はSNSで盛り上がりやすいテーマでもあり、男女を分断するような話題はすぐに社会のトレンドになってしまう。ひとつの事象について話し合うことは必要だが、意見を発信する前には、その背景をしっかりと自分自身で調べることも重要といえるだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部