湿布や風邪薬は薬局で買う
二つ目の改革案です。
2.OTC類似薬を、健康保険の対象から外す(3200億円~1兆円の医療費削減効果)
OTC医薬品は、薬局やドラッグストアなどで医師の処方箋なしで直接購入できる医薬品で、風邪薬・湿布・胃腸薬・ビタミン剤・うがい薬・目薬・漢方薬などが代表例です。
そしてOTC類似薬とは、OTC医薬品と効果やリスクなど薬の性質が似ていながら、健康保険でカバーされており、処方箋が求められる医薬品のことを指します。
OTC類似薬によって使われている医療費は3200億円~1兆円の規模であると報告されています。
例えば、日本総合研究所の試算では、OTC類似薬は医療費全体の2.3%を占め、関連する医療費は約1兆円に達すると報告されています。
日経新聞の調査(2016年度のデータ)では、5469億円でした。東京⼤学⼤学院薬学系研究科の医療政策・公衆衛⽣学特任准教授・五十嵐中先生が行なった推計によると、OTC類似薬を保険から外すことで削減できる医療費は、約3200億円でした。
健康保険の対象になることを、保険収載されると言いますが、OTC類似薬が保険収載から外されても、患者はOTC医薬品を比較的安価に薬局やドラッグストアで購入できます。OTC医薬品は一般的に、軽症患者が使う薬であるため、もし受診控えが起きても健康被害はない、もしくは小さいと考えられます。
さらには、OTC類似薬にはそもそも効果がないものも含まれているため、その観点からも需要抑制が健康被害につながらないと考えられます。
例えば、風邪(急性上気道炎)はウイルス感染であり、そもそも総合感冒薬には風邪のウイルスを倒す力や、回復を早める効果はありません。風邪による辛い症状を改善するという「対症療法」としての有効性に関しても、実はエビデンスはありません 。
発熱に対しては解熱鎮痛剤、咳に対してははちみつ(こちらは有効であるというエビデンスがある)などを用いた方がよいとされています。
湿布は年間54億回も処方されており、その医療費は1300億円に達するとも言われています。処方箋1枚あたり70枚もの湿布が処方されており、大量の湿布が保険によってカバーされていることが分かります(※現在は一度に処方できる湿布の枚数は63枚までとなっています)。
湿布は急性期の症状に対して、2~12週間の短期間の処方に関しては意味があるものの、それ以上の長期にわたる使用に関しては有効性に関するエビデンスが不十分です。
保険収載に残すとしても、短期処方のみを保険でカバーし、長期使用する方に関しては、保険を使わず自己負担で購入するか、OTC医薬品としてドラッグストアで購入して頂くようにするのがよいと思います。