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異様な雰囲気だった深夜の麹町警察署

2008年11月17日、18日。元厚生事務次官2名の自宅が立て続けに襲撃され、家族らが死傷する凄惨な事件が起こった。

厚生労働省は歴代事務次官経験者らに安全確保を呼び掛けるとともに、警察庁に彼らの身辺警護を要請。警察庁の米田壮刑事局長(当時)は「第3の犯行を許してはならない。一刻も早い犯人検挙を」と激を飛ばした。

襲撃された元事務次官のふたりはともに年金改革に携わっていたことから、メディアでは「年金問題に関連したテロではないか」と大きく報道された。

事態が動いたのは、事件発生から数日が経過した2008年11月22日。「犯人だ」と名乗る男が犯行を示す凶器などを持参し、レンタカーで警視庁に乗りつけ出頭したのだ。

「34年前、保健所に飼い犬を殺された仇討ちだった」

男が語った犯行動機はあまりにも不可解なものだった――。

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