石破首相も「2馬力の選挙にしても、どう考えてもおかしい」

兵庫県の問題は、元西播磨県局長・Aさん(60)が昨年3月に斎藤知事らの疑惑をメディアなどに匿名で告発したことで始まった。

斎藤知事の指示に基づく発信者調査で県当局はAさんの使っていた県公用パソコンから私的な文書を発見し、これを当時の総務部長が県議や県職員に見せて回り、漏洩したとみられている。

県議会の不信任決議採択を受け失職した斎藤氏は、出直し知事選に出馬。この選挙に「当選を目指さない」「斎藤さんを応援する」と言って出馬した立花孝志氏が、斎藤氏の街頭演説の直前や直後に同じ場所で演説することを繰り返した。

兵庫県知事選での立花氏(撮影/集英社オンライン)
兵庫県知事選での立花氏(撮影/集英社オンライン)
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「演説で立花氏は、漏洩したAさんの私的文書の“内容”と称するものを公言しながらAさんを非難。『このような人物が行なった告発は嘘で、斎藤さんは陥れられた』と主張し、その動画をSNSに投稿しました。この動きは斎藤さんの支持拡大に大きく寄与したとみられています」(県議会関係者)

この状態が「2馬力選挙」として選挙後に問題視されるようになった。

「公職選挙法は候補者宣伝の機会の平等を図るため、選挙カーや運動員の数を制限しています。当選を目的としない候補者が他の候補者を応援すれば機会の平等が守れなくなります」(永田町関係者)

行政の動きは速かった。12月には村上誠一郎総務相が国会答弁で、「候補者が他の候補者の選挙運動を行なう場合には、その対応によっては公職選挙法上の数量制限などに違反する恐れがあるものと考えています」と、違法の疑いがあると明言。

ことし1月には兵庫県選挙管理委員会が総務省に対し、他の候補への誹謗中傷や真偽不明の情報の拡散が行なわれたことに加え、2馬力手法が用いられた知事選は「公正性に欠けるものだった」として法整備を求めている。

石破首相(首相官邸SNSより)
石破首相(首相官邸SNSより)

2月4日の衆院予算委員会では、立憲民主党の米山隆一議員が、知事の疑惑解明に積極的だった竹内英明元県議が選挙中からSNSなどで誹謗中傷にさらされた末に1月に亡くなったことも挙げ、2馬力手法や誹謗中傷への法整備も含めた対処を石破首相に求めた。

これに対し石破氏は、「2馬力の選挙にしても、どう考えてもおかしい、ということだと思っております。選挙運動のやり方について、各党の合意を得て法改正をはじめとして、誰もが納得する選挙運動のありかたを確立するのは喫緊の課題だと認識を致しております」と即答したのだ。