生きている人たちに対して、モラル意識を訴えることの重要性

鈴木さんは、法律論のみを駆使せず、アートを織り交ぜながら人々に対して訴えかけていく。その根底には、こんな思いがあるからかもしれない。

「零が亡くなったとき、手元に残ったのは早稲田大学の履修届けでした。あれほど学びたかった大学でのキャンパスライフを送ることが叶わなかった息子を思って、私は早稲田大学へ入学することにしました。それは私にとって『息子を生きる』決意でした。19年間の子育てののち、それ以上の時間を息子に育てられたと思っています。

もちろん、厳罰化を訴えて実現させることも大切です。しかし同様に、今生きている人たちに対してモラル意識を訴えていくことも大切だと私は考えています。それを形にしたのが生命のメッセージ展であり、そこで息子を生かし続けたいと強く思いました」

鈴木氏は講演での啓蒙も多く行っている
鈴木氏は講演での啓蒙も多く行っている

生命のメッセージ展は、犯罪被害者を中心としてはいるものの、さまざまな理由で家族や知人の命を奪われた人たちが集う場所になっている。

「私は長年、ジェンダー・環境破壊など、社会性のあるテーマで制作・発表をしてきました。その延長に生命のメッセージ展もあります。生命は誰にとってもかけがえのないものであることを、改めて多くの人たちに知ってもらえたらと考えています。
そのためには、亡くなり方を限定することをせず、たとえばいじめを苦にした自死であったり、震災による死亡であったりしても、同じ志をもつ仲間だと考えています」